サマリー
◆ユーロ圏の2015年1-3月期のGDP成長率(速報値)は、前期比+0.4%に加速した。ドイツ、フランス、イタリア、スペインの主要4ヵ国がほぼ5年ぶりにそろってプラス成長となったが、原油価格下落という追い風を得た個人消費が牽引役となり、ユーロ圏における景気回復が広がりを持ってきたと判断される。ただ、原油安、ユーロ安、金利低下という追い風は、ここ数ヵ月は時に向かい風となっており、消費者信頼感や企業景況感の改善に頭打ちの兆しがある。景気指標が軒並み予想を上回り、景気回復に加速度がついた局面はそろそろ終わり、今後のユーロ圏経済は緩やかな成長局面に入ると予想される。なお、ユーロ圏の消費者物価上昇率は4月に前年比0.0%とマイナス圏を抜け出した。とはいえ、ECBが目標とする「前年比+2.0%をやや下回る」水準とはまだ大きく乖離しており、ECBは資産買取プログラムを計画通り遂行することに注力しよう。
◆英国の2015年1-3月期のGDP成長率(速報値)は前期比+0.3%となり、10-12月期の同+0.6%から予想外に減速した。ただし、原油価格下落に加え、失業率低下、実質賃金上昇率の伸び加速など、消費を取り巻く環境は明らかに改善している。BOEも指摘しているように、1-3月期の成長率は上方修正される可能性が高く、4-6月期以降も前期比+0.6%程度の堅調な成長が続くと予想される。なお、5月7日の総選挙(英国議会下院選挙)では事前予想を覆して保守党が単独過半数の議席を獲得した。迅速な政権樹立に加え、住宅取得てこ入れ策が実施されること、法人税率や所得税率の引き上げが回避されたことは英国経済にポジティブである。他方で、EU加盟継続の是非を問う国民投票が2017年末までに実施されることが新たな不透明要因となる。最近の世論調査ではEU残留派がEU離脱派を上回っているが、キャメロン政権とEUとの交渉過程でEU離脱派が勢いを増す可能性はあり、今後の交渉過程には注意が必要である。
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