サマリー
◆2015年5月7日(木曜日)、英国では5年に一度の総選挙が庶民院(House of Commons:米国の下院に相当)で実施される。2010年の前回総選挙では、1974年以来初めて2大政党である保守党と労働党がいずれも単独過半数を得られなかったことにより政治のパターンが大きく変わったといっても過言ではない。各メディアの事前予想は様々ではあるが、最終的に2大政党がその他の政党とどのように連立を組むかが政権を握る上で重要となる。
◆混戦が予想される今回の選挙で鍵を握るのは、移民政策における各党のスタンスといわれている 。景気が上向いてきたものの、依然、若年層失業率が高止まりしているなどの理由により、移民に対する国民の懸念や反発が募っている現実がある。2大政党が掲げる移民抑制政策を生ぬるいと感じる有権者の票が、EUからの離脱を政策として掲げる英国独立党へと流れている。
◆保守党は根本的な政策の転換として、英国のEU離脱(BREXIT)を問う国民投票の実施を政権公約に掲げている。一方で、労働党は基本条約に大幅な変更がない限り国民投票は行わないと表明しており、ゴードン・ブラウン元首相はインタビューの中で、EU離脱の選択は英国が欧州における北朝鮮になる可能性が高いと警告している。
◆2015年1月に行われたギリシャ総選挙で急進左派連合のシリザ(ツィプラス党首)が政権を奪取したことを始め、反緊縮等のポピュリスト政党を支持する気運が高まってきている。今回の英国の総選挙は、ポルトガルやスペインなど今年続けざまに実施される欧州での総選挙に向けた重要な前哨戦といわれている。昨今の英国民の間では、反EUの気運が相当の高まりを見せているだけに、移民政策やEU離脱に対して、今回の総選挙で英国民がどの様な決断を行うか注目する必要があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日