やはり欧州は変われないのか

2012年に向けて難題が山積みだが、ユーロ解体はない

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2011年12月16日

  • 児玉 卓

サマリー

◆いつものように、12月のEU首脳会議はユーロ危機の沈静化に失敗した。合意事項の柱の一つである「財政規律の強化」は「財政統合」とは別物であり、財政・金融の複合危機下では何の役にも立たない。危険ですらある。危機が求めているのは金銭的な裏づけを伴うセーフティネットの整備であるが、それはやはり不十分に終わった。

◆2012年に向けて懸念されるのは、景気停滞が進む中で、各国の政治的求心力が一段と弱まることである。EU、ユーロ圏の失策や無策が危機の深刻化を招いていることは確かだが、リーダー国のリーダーシップの弱さとかポピュリズム云々が問題なのではない。EUが各国政府代表の合議体であるという現行制度が必然的に政策調整を著しく困難にしている。景気悪化は、意味のある政策策定をこれまで以上に困難にするだろうし、結局のところ、危機収束の最終解である財政統合は、政治統合なしには現実化しないと見るべきである。従って、危機が長期化、深刻化する中で、ECBの負担が増大せざるを得ない。

◆一方、ユーロ解体は極端なリスクシナリオにとどまろう。通貨を解体したり、通貨同盟から脱却するのは簡単な作業ではないし、そのような政治決断が可能であるとは思われない。

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