サマリー
◆いつものように、12月のEU首脳会議はユーロ危機の沈静化に失敗した。合意事項の柱の一つである「財政規律の強化」は「財政統合」とは別物であり、財政・金融の複合危機下では何の役にも立たない。危険ですらある。危機が求めているのは金銭的な裏づけを伴うセーフティネットの整備であるが、それはやはり不十分に終わった。
◆2012年に向けて懸念されるのは、景気停滞が進む中で、各国の政治的求心力が一段と弱まることである。EU、ユーロ圏の失策や無策が危機の深刻化を招いていることは確かだが、リーダー国のリーダーシップの弱さとかポピュリズム云々が問題なのではない。EUが各国政府代表の合議体であるという現行制度が必然的に政策調整を著しく困難にしている。景気悪化は、意味のある政策策定をこれまで以上に困難にするだろうし、結局のところ、危機収束の最終解である財政統合は、政治統合なしには現実化しないと見るべきである。従って、危機が長期化、深刻化する中で、ECBの負担が増大せざるを得ない。
◆一方、ユーロ解体は極端なリスクシナリオにとどまろう。通貨を解体したり、通貨同盟から脱却するのは簡単な作業ではないし、そのような政治決断が可能であるとは思われない。
◆2012年に向けて懸念されるのは、景気停滞が進む中で、各国の政治的求心力が一段と弱まることである。EU、ユーロ圏の失策や無策が危機の深刻化を招いていることは確かだが、リーダー国のリーダーシップの弱さとかポピュリズム云々が問題なのではない。EUが各国政府代表の合議体であるという現行制度が必然的に政策調整を著しく困難にしている。景気悪化は、意味のある政策策定をこれまで以上に困難にするだろうし、結局のところ、危機収束の最終解である財政統合は、政治統合なしには現実化しないと見るべきである。従って、危機が長期化、深刻化する中で、ECBの負担が増大せざるを得ない。
◆一方、ユーロ解体は極端なリスクシナリオにとどまろう。通貨を解体したり、通貨同盟から脱却するのは簡単な作業ではないし、そのような政治決断が可能であるとは思われない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日