2024年のASEAN経済見通し

外需の緩やかな回復と底堅い内需を背景に、成長は加速か

RSS

2024年03月07日

サマリー

◆2023年のASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の実質GDP成長率は、すべての国でコロナ禍前5年平均を下回った。①半導体需要の低迷、②中国経済の減速、③米国における低価格財消費の落ち込みといった、外需の減速が重石となったためである。他方で、雇用環境の改善、インフレの落ち着き、堅調な海外送金流入、大規模な公共投資を背景に、内需は底堅かった。

◆2024年のASEAN5の実質GDP成長率は、外需の緩やかな回復と、底堅い内需が支えとなり、前年から若干加速する見通しである。中国経済の減速は引き続き重石となる一方、半導体需要の回復や、米国等へのサプライチェーンの再編に伴う輸出の増加が追い風となるだろう。さらに、インフレの落ち着きと利下げによって、年央から年末にかけて民間消費の回復も加速するだろう。タイでは、景気刺激策が遅延なく実施された場合、潜在成長率を上回る成長が期待できる見通しである。

◆リスクは、米国による中国に対する過度な規制強化と、米国のリセッションリスクである。前者については、対中強硬派のトランプ政権が発足した場合、中国との貿易関係が緊密なASEAN5にも悪影響が及ぶ可能性がある。また後者の米国のリセッションリスクは、ASEAN5からの資本流出を促し、各国の利下げのタイミングを遅らせるだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。