サマリー
◆2023年のASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の実質GDP成長率は、すべての国でコロナ禍前5年平均を下回った。①半導体需要の低迷、②中国経済の減速、③米国における低価格財消費の落ち込みといった、外需の減速が重石となったためである。他方で、雇用環境の改善、インフレの落ち着き、堅調な海外送金流入、大規模な公共投資を背景に、内需は底堅かった。
◆2024年のASEAN5の実質GDP成長率は、外需の緩やかな回復と、底堅い内需が支えとなり、前年から若干加速する見通しである。中国経済の減速は引き続き重石となる一方、半導体需要の回復や、米国等へのサプライチェーンの再編に伴う輸出の増加が追い風となるだろう。さらに、インフレの落ち着きと利下げによって、年央から年末にかけて民間消費の回復も加速するだろう。タイでは、景気刺激策が遅延なく実施された場合、潜在成長率を上回る成長が期待できる見通しである。
◆リスクは、米国による中国に対する過度な規制強化と、米国のリセッションリスクである。前者については、対中強硬派のトランプ政権が発足した場合、中国との貿易関係が緊密なASEAN5にも悪影響が及ぶ可能性がある。また後者の米国のリセッションリスクは、ASEAN5からの資本流出を促し、各国の利下げのタイミングを遅らせるだろう。
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