変わるインド、変わらないインド

現地視察を終えて

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2014年12月25日

  • 児玉 卓

サマリー

◆モディ政権発足から半年を経た現在も、官民問わず「インドは変わる」、「インド経済は良くなる」という楽観論は衰えていない。これは政府による経済改革を後押しし、自己実現的な景気の拡大につながりもする。ただし一方、中央と地方とでこうした期待に温度差があるとも感じられる。地方分権は民主主義と並ぶインド政治のアイデンティティであり、中央の政策を地方に浸透させることは、可能であったとしても時間がかかる。拙速な改革効果の発現を期待するべきではない。その意味で、現在判明しているモディ政権の経済改革に向けた施策は小粒なものばかり、という批判はないものねだりに近い。


◆現政権が取り組んでいる、ないしは取り組もうとしている政策課題は、総じて前政権からの継続案件が多く、目新しさには乏しい。むしろ政策遂行に関わる特徴は、“Make in India”に代表されるメッセージの明確さであろう。製造業の活性化が同国経済の高成長再開のカギであるとすれば、その実現に向けてなすべきことは製造業分野の投資環境の改善である。こうしたシンプルな筋道を示すことが、政府の求心力の向上に貢献すればしめたものである。ただし、製造業重視はサービスセクター依存の限界の裏返しでもあり、持続的高成長への道のりは平坦ではない。

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