サマリー
◆中国国家統計局によると、2025年1月~3月の実質GDP成長率は前年比5.4%(以下、断りのない限り変化率は前年比、前年同期比、前年同月比)となった。「トランプ関税2.0」が本格化する前の駆け込み輸出と、家電の買い替え促進策の政策効果が、堅調な景気推移をサポートした。
◆2025年4月に米中で追加関税のかけあいがエスカレートし、米国は中国からの全輸入に累計145%、中国は米国からの全輸入に累計125%の追加関税措置を講じた。大和総研は米国の累計145%の追加関税で中国の実質GDPは2.91%下押しされると試算している。
◆今後、中国政府は金利・預金準備率の引き下げ、さらなる積極的な財政政策などによって、景気を支えるであろう。それでも「トランプ関税2.0」による経済下押しを相殺することは困難だ。大和総研は2025年の実質GDP成長率の予測を前月号の4.5%から3.9%に、2026年を同様に4.2%から4.0%に引き下げた。4月4日付けの大和総研レポート「『相互関税』を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正」では、米国の中国からの全輸入に対する追加関税が累計54%の段階で、上記と同じ成長率見通しとしていた。追加関税がさらに上乗せされたにもかかわらず、見通しを変更しないのは、(1)その後、中国以外の国・地域に対する相互関税の上乗せ部分が90日間停止となり、中国の対米迂回輸出がある程度温存されること、(2)米国による145%、中国による125%の累計追加関税は持続可能ではなく、比較的早期に引き下げが期待できること、などによる。今後の動向に注目したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済見通し:全人代後の中国経済の行方
「トランプ関税2.0」、不動産不況VS内需拡大
2025年03月21日
-
中国:地方経済の苦境と全人代の注目点
トランプ・リスクの中、25年は内需拡大に注力だが副作用にも要注意
2025年02月26日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
-
中国経済見通し:景気テコ入れ策の効果を総点検
家電・自動車買い替え促進策の効果が発現。住宅市場テコ入れ策は?
2024年11月22日
-
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:関税引き下げを受け、見通しを上方修正
25年は3.9%→4.8%、26年は4.0%→4.2%に上方修正
2025年05月23日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
2025年1-3月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率▲0.2%に改善するも民間在庫が主因
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日