サマリー
◆2024年3月5日に、日本の国会に相当する第14期全国人民代表大会(全人代)第2回会議が開幕する。2024年の政府成長率目標は、2023年と同じ5%前後になる可能性が高い。
◆緩和的な金融政策と拡張的な財政政策が中国経済を下支えしよう。2024年2月5日、中国人民銀行は大手行を中心に預金準備率を0.5%pt引き下げた。これによって、1兆元(約20兆円、GDP比0.8%)の貸出余力が増える計算だ。さらに、2月20日、中国人民銀行は住宅ローン金利の参照レートであるLPR5年物を0.25%pt引き下げ、3.95%とした。不動産不況が続く中、住宅需要を刺激したいとの当局の意志が感じられる。政策金利、預金準備率ともに引き下げ余地は残っている。また、中国政府は財政赤字のGDP比を3%以内に抑制するなど財政規律を重んじてきたが、2023年は期中の国債増発により、3.8%となった。2024年もこの枠にとらわれないであろう。収益性のあるインフラプロジェクトなどに投入される地方政府特別債券(専項債)は増額される可能性がある。
◆2024年の中国経済を左右するのは不動産不況からの脱却の可否である。2024年に入り、脱却に向けた動きが、より具体化してきている。不動産金融について、住宅・都市農村建設部と国家金融監督管理総局が2024年1月12日付けで、「都市不動産金融調整制度の導入に関する通知」を発出し、金融支援を行うべき不動産プロジェクトのリスト(ホワイトリスト)を作成するとした。緩和的な金融政策と拡張的な財政政策に加え、不動産不況からの脱却が軌道に乗れば、2024年は5.0%程度の実質成長が可能となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済見通し:2024年の注目点と中長期展望
「民営企業」「台湾有事」「成長力低下」「経済規模の米中逆転はなし」
2024年01月23日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
中国:国債増発で5%超成長。背景に習氏の面子
李克強前首相死去、1兆元の国債増発、独身の日のネットセール
2023年11月22日
-
中国:消費主導の景気回復。でも強くはない
2023年は政府目標の5%前後の実質成長を達成へ
2023年10月23日
-
中国版「失われた20年」の始まり?
人口減少・少子高齢化、総需要減少、過剰投資、過剰債務、国進民退
2023年09月21日
-
中国:最悪ケースは金融危機のトリガーに
「不動産不況」が深刻化、軟着陸の鍵は健全な民営デベロッパーの救済
2023年08月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日