サマリー
◆不動産市場が安定化し、民営企業の活力が高まることで、2024年は5%程度の安定成長が可能となろう。一方のリスクシナリオでは、「国進民退」がなかなか解消せず、住宅市場の停滞が続くことを想定している。この場合は、拡張的な財政政策と金融緩和が経済を支えても、2024年の実質GDP成長率は4.3%程度にとどまろう。
◆2020年10月に習近平総書記は「2035年にGDPを2020年の2倍にすることは完全に可能である」としたが、これは達成不可能であろう。実質で2倍にするには、年平均4.7%強の成長率が必要である。しかし、中国経済は、(1)人口減少と少子高齢化の急速な進展、(2)住宅需要の減退など総需要の減少、(3)過剰投資と投資効率の低下、(4)過剰債務問題、(5)「国進民退」とイノベーションの停滞、などの構造的問題を抱え、成長力は大きく低下していく見通しだ。
◆コロナショック前の2019年頃は、2020年代後半にも中国の経済規模が米国を上回るとみられていたが、筆者の試算では2035年時点でも米国の経済規模が中国を15%程度上回る。米中の経済規模は逆転しない可能性が極めて高い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
中国:国債増発で5%超成長。背景に習氏の面子
李克強前首相死去、1兆元の国債増発、独身の日のネットセール
2023年11月22日
-
中国:消費主導の景気回復。でも強くはない
2023年は政府目標の5%前後の実質成長を達成へ
2023年10月23日
-
中国版「失われた20年」の始まり?
人口減少・少子高齢化、総需要減少、過剰投資、過剰債務、国進民退
2023年09月21日
-
中国:最悪ケースは金融危機のトリガーに
「不動産不況」が深刻化、軟着陸の鍵は健全な民営デベロッパーの救済
2023年08月22日
-
中国:局面打開策は民営企業の強力テコ入れ
23年4~6月の中国経済、ロックダウンからの反動は小幅にとどまる
2023年07月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
【更新版】中国:100%関税回避も正念場はこれから
具体的な進展は「フェンタニル関税」の10%引き下げにとどまる
2025年11月04日
-
中国:100%関税回避も正念場はこれから
具体的進展は「フェンタニル関税」の10%引き下げにとどまる
2025年10月31日
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日

