CO2排出量から考えるESG情報におけるデータの読み方

発行体のCO2排出削減量には、国のエネルギー政策が大きく影響

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2019年08月08日

  • 田中 大介

サマリー

◆ESG投資やその判断材料となるESG格付では、発行体の気候変動問題への取り組み(CO2排出削減量など)が考慮されている場合が多く、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の考え方の広まりなどからもそれは明らかである。インパクト・インベストメントの市場規模拡大から、従来以上に取り組みの中身に衆目が集まっている。

◆発行体のCO2排出量の内訳を見ると、Scope2(間接排出量)の割合が大きい。業種にもよるが、主に電力消費に係るCO2排出量の影響が大きいと考えられ、その国の電源構成がCO2の排出量や削減量を決定付ける一因となっている。

◆電源構成やその変遷は国によって大きく異なり、CO2排出係数(電力当たりCO2排出量)も同様である。日本の場合、東日本大震災による原子力発電の停止によって、排出係数は震災以前に比べて上昇している。他方、米国や英国などの排出係数は低下しており、国によって発行体の電力消費に係るCO2排出量が左右される状況にある。

◆CO2排出係数の変化による影響を除いた、発行体固有のCO2排出削減量について、日本と英国を比較した。影響の除外前後で、両国発行体のCO2排出削減率に大きな差が見られた。CO2排出量を含むESG情報には、それぞれにデータの特徴や限界があるため、投資家や発行体、ESG格付機関等がこれを認識した上で情報活用されることが望まれる。

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