2017年05月25日
サマリー
◆売上高当たりCO2排出量、女性の登用、独立取締役の選任と2012年度から2015年度のROAやROEの関係を分析したところ、次の結果を得た。
◆分析対象企業を売上高当たりCO2排出量の水準や独立取締役の選任状況でグループ分けすると、各グループのROAやROEの平均的な水準に統計的に有意な差が見られることから、それらファクターとROAやROEに何らかの関係が存在していることが示唆される。
◆2つのESGファクターを組み合わせた分析では、売上高当たりCO2排出量について、その水準と増減率を組み合わせることで環境のファクターとROAやROEとの関係が強まっている可能性を示唆する結果が得られた。これは、この種の分析において、水準と増減率を同時に考慮する必要があることを示しているだろう。
◆また、売上高当たりCO2排出量の水準と女性の登用についても、それぞれのファクターを単独で用いるよりもそれらを組み合わせた方が企業価値や成長性を分析する際の有効性が高まる可能性を示唆する結果となった。
◆本稿の分析結果は、ESGファクターとROAやROEとの因果関係を示したものではないが、複数のESGファクターが企業の収益性や成長性と関係している可能性を示すものである。ESGの一部や特定のファクターではなく、ESG全体を意識した経営判断や企業行動が企業価値の向上につながること、そして企業の持続可能性を高めることが示唆されるのではないか。
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