日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編③)

~業種によって異なるが、同一業種内でもCO2排出量の状況がリターンに関係している可能性を示唆~

RSS

サマリー

◆同一業種に属する企業を対象とした場合に、2014年度の売上高当たりCO2排出量の水準や排出量の増減と株式リターンとの間に何らかの関係があるかを調べたところ、次の結果を得た。なお、分析対象の業種は、分析に必要なデータを取得できた企業が30社以上存在する6つの業種である。


◆電気機器、化学、機械では検証したすべての保有期間において排出量の水準が高い企業で構成したポートフォリオよりも水準が低い企業のポートフォリオのリターンが高かった。


◆また、食料品と輸送用機器は比較的中・長期の保有期間で排出量の水準が低い企業のリターンが高く、建設業は比較的保有期間が短いケースで排出量の水準が低い企業のリターンが高かった。


◆排出量の前年度増減率では、機械と食料品はすべての保有期間で排出量が増加した企業よりも減少した企業のリターンが高い。電気機器、化学、輸送用機器では、保有期間が2.5年間以上で排出量が減少した企業のリターンが高い。建設業は保有期間が5.5年間と2.5年間のみ減少した企業のリターンが高かった。


◆売上高当たりCO2排出量は環境効率性を表す指標の1つとされている。本稿の分析は因果関係を示したものではないが、上記の結果は、電気機器、化学、機械、食料品は環境効率性が高い企業や、環境効率性が向上した企業のリターンが高いという傾向が見受けられ、環境効率性とリターンとの間に何らかの関係がある可能性がうかがえよう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート