日本企業の女性登用の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編)

~業種によって異なるが、同一業種内でも積極的に女性管理職を登用している企業のリターンが高い傾向が見受けられる~

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サマリー

◆前編では、女性登用の状況で企業をグループ分けすると、管理職や役員に女性を積極的に登用している企業で構成したポートフォリオの収益性やリターンが高い傾向が見受けられた。この結果には、グループによって業種構成が異なることが影響している可能性がある。そこで、本稿では業種という要因を考慮に入れて、女性の登用と企業パフォーマンスとの関係を検討した。


◆女性管理職や女性役員の登用の状況は業種によって大きく異なっているため、前編で紹介した5年間の保有リターンと通期の事後リターンを対象に、業種要因を除いたリターンを算出した。女性管理職については、女性を登用しているかどうかよりも、積極的に女性を登用していることがリターンの向上に寄与する可能性が示唆された。女性役員については、女性役員の登用の有無がリターンと関係しているようである。


◆女性登用に関するデータを取得できた企業が50社以上の7業種について、同一業種に属する企業の女性登用とリターンの関係を検討すると、業種によって様相は異なるが、積極的に女性管理職を登用している企業のリターンが高いという傾向が4つの業種で見られた。女性役員については、リターンとの間に特に関係が見られない業種が多かった。


◆本稿の分析は、約900社を対象としていることや因果関係を見たものではないことなどの課題はあるが、分析結果から管理職に女性を積極的に登用することは企業価値の向上に寄与すると市場が評価し、高いリターンが得られた可能性が示唆される。投資プロセスに女性の登用というESG要因を加えることと運用パフォーマンスとの関係に関する分析の蓄積が進み、ESG投資が運用パフォーマンスの向上につながることや経済成長に寄与することが期待される。

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