2016年07月25日
サマリー
◆前編では、女性登用の状況で企業をグループ分けすると、管理職や役員に女性を積極的に登用している企業で構成したポートフォリオの収益性やリターンが高い傾向が見受けられた。この結果には、グループによって業種構成が異なることが影響している可能性がある。そこで、本稿では業種という要因を考慮に入れて、女性の登用と企業パフォーマンスとの関係を検討した。
◆女性管理職や女性役員の登用の状況は業種によって大きく異なっているため、前編で紹介した5年間の保有リターンと通期の事後リターンを対象に、業種要因を除いたリターンを算出した。女性管理職については、女性を登用しているかどうかよりも、積極的に女性を登用していることがリターンの向上に寄与する可能性が示唆された。女性役員については、女性役員の登用の有無がリターンと関係しているようである。
◆女性登用に関するデータを取得できた企業が50社以上の7業種について、同一業種に属する企業の女性登用とリターンの関係を検討すると、業種によって様相は異なるが、積極的に女性管理職を登用している企業のリターンが高いという傾向が4つの業種で見られた。女性役員については、リターンとの間に特に関係が見られない業種が多かった。
◆本稿の分析は、約900社を対象としていることや因果関係を見たものではないことなどの課題はあるが、分析結果から管理職に女性を積極的に登用することは企業価値の向上に寄与すると市場が評価し、高いリターンが得られた可能性が示唆される。投資プロセスに女性の登用というESG要因を加えることと運用パフォーマンスとの関係に関する分析の蓄積が進み、ESG投資が運用パフォーマンスの向上につながることや経済成長に寄与することが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
ESGファクターと企業パフォーマンス(上)
~ESGファクターの組み合わせとROA、ROEの関係~
2017年05月25日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編③)
~業種によって異なるが、同一業種内でもCO2排出量の状況がリターンに関係している可能性を示唆~
2017年02月08日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編②)
~業種によって異なるが、同一業種内でもCO2排出量の状況がROAやROEに関係している可能性を示唆~
2016年12月19日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編①)
~企業パフォーマンスを業種要因と企業要因に分解し、業種の影響を考慮してCO2排出量との関係を分析~
2016年12月16日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(前編)
~売上高当たりCO2排出量と企業パフォーマンスとの間に何らかの関係が存在する可能性を示唆~
2016年09月06日
-
日本企業の独立取締役の選任状況と企業パフォーマンスとの関係(前編)
~独立取締役を複数選任している企業の収益性やリターンが高い~
2016年04月19日
-
日本企業の独立取締役の選任状況と企業パフォーマンスとの関係(後編)
~業種によって異なるが、同一業種内でも独立取締役を選任している企業の収益性やリターンが高い傾向が見受けられる~
2016年05月20日
-
日本企業の女性登用の状況と企業パフォーマンスとの関係(前編)
~女性を積極的に登用している企業の収益性やリターンが高い~
2016年05月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
紛争の激化がサステナブルファイナンスに与える影響
脱炭素への取り組み、防衛産業の取り扱い、人権保護等の観点から
2026年04月13日
-
企業のAI導入・利用に必要な人権の視点
世界で進展するAI規制の展開と日本の現状を踏まえて
2026年04月10日
-
英国でもESG投資と受託者責任の関係は混迷
年金基金のESG投資に関するガイダンス策定を定める法案が否決
2026年04月03日
最新のレポート・コラム
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
AIが変える議決権行使助言業
中立性・客観性確保のための利用を訴求へ
2026年05月13日
-
中東リスクがASEAN進出企業に与える影響の差は、どのように生じているか?
2026年05月15日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

