2016年09月06日
サマリー
◆上場企業全体と2014年度の売上高当たりCO2排出量のデータが取得できた企業全体のROAとROEを比べると、排出量のデータが取得できた企業の方が平均的なROAやROEの水準が高い傾向が見受けられた。CO2排出量に関する情報開示とROAやROEの水準との間に何らかの関係があることを示唆する可能性があろう。
◆売上高当たりCO2排出量の水準で企業を二分し、各グループのROAとROEの水準を比較したところ、排出量の水準が小さい企業の方が2012年度から2015年度のいずれの年度でもROAとROEが高い。また、保有期間を5.5年間から0.5年間まで変えてリターンを計測したところ、排出量の小さいグループのリターンが高い傾向が見受けられた。
◆売上高当たりCO2排出量の前年度比増減率を用いた分析では、排出量が増加した企業よりも減少した企業の方が2013年度以外の年度でROAやROEが高い。また、リターンについては保有期間が2.5年間以上の期間では排出量が増加した企業よりも減少した企業のリターンが高いが、1.5年間と0.5年間では逆の関係となっている。売上高当たりCO2排出量を削減した後ではなく、排出量を削減する過程を市場が評価している可能性があろう。
◆また、売上高当たりCO2排出量の増減率で対象企業を4つのグループに分けた分析では、売上高当たりCO2排出量の大きな変化という情報がリターンと関係している可能性を示唆する結果が得られた。
◆売上高当たりCO2排出量は環境効率性の指標の1つと考えられる。本稿の分析は因果関係を示すものではないが、環境効率性と企業パフォーマンスとの間に何らかの関係が存在する可能性を示唆するのではないか。ただ、以上の結果には企業をグループ分けした際の業種構成の違いが影響している可能性がある。後編では、業種というファクターを考慮した分析の結果を紹介する予定である。
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