2017年07月05日
サマリー
◆ESGファクターとして、売上高当たりCO2排出量、女性の登用、独立取締役の選任を用い、2012年初に等金額で投資して2016年末までの5年間保有したときのリターンとの関係を分析したところ、次の結果を得た。
◆分析対象企業を売上高当たりCO2排出量の水準や増減でグループ分けすると、グループのリターンに統計的に有意な差が見られることがわかった。環境効率性の水準や環境効率性を高めることがリターンと関係している可能性を示唆しよう。
◆また、女性管理職については、管理職女性比率が20%以上のグループのリターンが他のグループより高く、独立取締役については独立取締役比率が50%以上のグループのリターンが他のグループより高い。女性の登用や独立取締役については、積極的に登用や選任を行っていることがリターンと関係している可能性があろう。
◆2つのESGファクターを組み合わせた分析では、売上高当たりCO2排出量の水準と増減を組み合わせることで投資指標としての有効性が高まることを示唆する結果が得られた。女性役員の選任と独立取締役の選任の組み合わせでも有効性が高まることを示唆する結果となったが、その効果は小さい。
◆また、「排出量の水準小で女性役員の選任あり」に属する企業のリターンが高いことや、「排出量の水準大で女性管理職の登用なし」に属する企業のリターンが低いことなど、ファクターを組み合わせることでポートフォリオのリターンの向上や、リターンの低下の抑制に寄与する可能性を示唆する結果が得られた。
◆本稿の分析結果は、ESGファクターとリターンとの因果関係を示したものではない。また、業種構成の違いやグループによっては属する企業数が少ないことなどの影響も考えられる。だが、複数のESGファクターが株式リターンの平均的な水準と関係していることが確認された。それは、投資プロセスにESGファクターを考慮することが投資パフォーマンスの向上に寄与する可能性を示唆しよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本企業の人材育成制度の導入状況と財務パフォーマンス(上)
~人材育成に関する制度の導入状況とその動向~
2017年12月20日
-
ESGファクターと企業パフォーマンス(下)
~ESGファクターの組み合わせと時価総額加重平均リターンの関係~
2017年09月07日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(前編)
~売上高当たりCO2排出量と企業パフォーマンスとの間に何らかの関係が存在する可能性を示唆~
2016年09月06日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編①)
~企業パフォーマンスを業種要因と企業要因に分解し、業種の影響を考慮してCO2排出量との関係を分析~
2016年12月16日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編②)
~業種によって異なるが、同一業種内でもCO2排出量の状況がROAやROEに関係している可能性を示唆~
2016年12月19日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編③)
~業種によって異なるが、同一業種内でもCO2排出量の状況がリターンに関係している可能性を示唆~
2017年02月08日
-
ESGファクターと企業パフォーマンス(上)
~ESGファクターの組み合わせとROA、ROEの関係~
2017年05月25日
同じカテゴリの最新レポート
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
-
サステナビリティWGの中間論点整理の公表
2027年3月期から順に有価証券報告書でのサステナビリティ開示拡充
2025年07月28日
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日