2016年12月16日
サマリー
◆データが取得できた上場企業を対象に、2014年度の売上高当たりCO2排出量の水準で企業を二分すると、排出量の水準が小さい企業の方がROAとROEが高い。業種構成の違いを考慮するために、ROAやROEを業種要因と企業要因に分解すると、企業要因による部分の高いことが結果に影響していることがわかった。
◆リターンについても同様に、5.5年間保有リターンを業種要因と企業要因に分解すると、売上高当たりCO2排出量が大きい企業よりも小さい企業のリターンが高いのは、企業要因リターンが高いことが寄与している。
◆同様に、売上高当たりCO2排出量の増減率では、排出量が増加した企業よりも減少した企業のリターンが高いが、これも企業要因によるリターンが高いことが寄与している。また、排出量の減少率が高い企業の企業要因によるリターンが高く、逆に排出量の増加率が高い企業の企業要因リターンが低い。
◆売上高当たりCO2排出量は環境効率性の指標の1つと考えられる。本稿の分析は因果関係を示すものではないが、業種の影響を除いても、環境効率性と企業パフォーマンスとの間に何らかの関係が存在する可能性を示唆するのではないか。
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