2016年04月19日
サマリー
◆ESG要因として独立取締役の選任状況数を取り上げ、企業の収益性の代表的な指標であるROAとROE、そして株式リターンとの関係を分析したところ、次の結果を得た。
◆ROAとROEの平均的な水準は、独立取締役を選任していない企業よりも選任している企業の方が高い。また、独立取締役を1名のみ選任している企業と複数名選任している企業では、複数名選任している企業のROAとROEの水準が高い。
◆リターンについては、やはり独立取締役を選任している企業で構成したポートフォリオのリターンが選任していない企業で構成したポートフォリオのリターンよりも高い。さらに、独立取締役を1名選任している企業よりも複数名選任している企業で構成したポートフォリオのリターンが高い。
◆業種構成の相違によるリターンへの影響を検討するために、各ポートフォリオのリターンを業種要因リターンと企業要因リターンに分解したところ、独立取締役を選任していない企業のポートフォリオは企業要因リターンがマイナスとなった。一方、独立取締役を選任している企業の企業要因リターンはプラスで、独立取締役を1名選任している企業よりも複数名選任している企業の方が企業要因リターンの水準が高い。
◆以上の結果は、独立取締役の選任状況と企業パフォーマンスの因果関係を示すものではないが、投資プロセスに独立取締役の選任というESG要因を加えることが運用パフォーマンスの向上に寄与することを示唆する可能性があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編②)
~業種によって異なるが、同一業種内でもCO2排出量の状況がROAやROEに関係している可能性を示唆~
2016年12月19日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編①)
~企業パフォーマンスを業種要因と企業要因に分解し、業種の影響を考慮してCO2排出量との関係を分析~
2016年12月16日
-
日本企業のCO2排出量の状況と企業パフォーマンスとの関係(前編)
~売上高当たりCO2排出量と企業パフォーマンスとの間に何らかの関係が存在する可能性を示唆~
2016年09月06日
-
日本企業の女性登用の状況と企業パフォーマンスとの関係(後編)
~業種によって異なるが、同一業種内でも積極的に女性管理職を登用している企業のリターンが高い傾向が見受けられる~
2016年07月25日
-
日本企業の女性登用の状況と企業パフォーマンスとの関係(前編)
~女性を積極的に登用している企業の収益性やリターンが高い~
2016年05月23日
-
日本企業の独立取締役の選任状況と企業パフォーマンスとの関係(後編)
~業種によって異なるが、同一業種内でも独立取締役を選任している企業の収益性やリターンが高い傾向が見受けられる~
2016年05月20日
-
日本企業における女性登用の動向と企業パフォーマンス
『大和総研調査季報』 2016年新春号(Vol.21)掲載
2016年03月01日
同じカテゴリの最新レポート
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
-
サステナビリティWGの中間論点整理の公表
2027年3月期から順に有価証券報告書でのサステナビリティ開示拡充
2025年07月28日
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日