株主提案に対する機関投資家の議決権行使

運用会社の議決権行使基準と過去事例から今後を見通す

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  • 調査本部 フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史

サマリー

◆主要機関投資家の議決権行使基準を比較すると、株主提案の議決権行使判断において、幾つかの共通点が確認できる。当然、機関投資家はその議案が中長期的な企業価値向上に資するかを重視しており、気候変動や人権等のサステナビリティ関連提案には肯定的なスタンスを示している。一方、政治的主張や経営の自由度を過度に制約する提案には否定的なスタンスである。

◆サステナビリティ関連の株主提案では、みずほフィナンシャルグループの2020年の定款変更を求める気候変動関連提案は34%の賛成率を記録し、当時注目されたが、その後の同様な株主提案の賛成率は低下傾向にある。それは株主側の気候変動に対する関心の低下が影響している可能性もあるが、企業側のこれまでの取組が評価され、定款に書き込み経営の自由度を制約するほどではないという認識が広がっているからであろう。

◆定款変更を伴わない株主提案のなかでは、2021年にエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが、東芝の臨時株主総会で提案した第三者調査の実施を求める議案が注目される。これは普通決議の議案であり、実際に57.9%の賛成で可決された。第三者調査に関する提案であれば、過度に経営を制約するものでもなく、機関投資家の賛同を得やすいという側面もあろう。

◆気候変動関連の株主提案は賛成率が低下傾向にあることから、環境NPOは、定款変更以外の方法を模索する可能性がある。今後、環境NPOとアクティビストが共闘することも考えられるが、アクティビストの投資目的は金銭的リターンの追求であり、中長期的企業価値向上に繋がると判断される議案でなければ、一般の機関投資家の賛同も得られない。そのため、実際に対象となるケースは限られよう。

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