サマリー
本稿では、政府の医療保険制度における応能負担の強化策として検討項目の一つに掲げられている「医療費自己負担への資産勘案」について、具体的検討を進める際の主要論点を整理する。医療費自己負担への資産勘案とは、70歳以上の高齢者につき、所得だけでなく資産も勘案して医療費自己負担割合を判定し、最大で70歳未満と同様の3割の負担とすることである。
先行研究を踏まえると、負担能力のある高齢者に限って自己負担割合を引き上げても、健康状態への影響は限定的と見込まれる。ただし、医療費自己負担への資産勘案は「負担は能力に応じて、給付は必要に応じて」という社会保険の原理原則に大きく抵触する。また、仮に医療費自己負担に関して資産を勘案する場合は、70歳以上の高齢者に対する3割を下回る自己負担(7割を上回る給付)につき財源構成も含めた理論的整理も必要である。
医療費自己負担への資産勘案の導入は、国民の資産形成や資産選択に歪みをもたらす懸念もある。英・米の社会扶助的な制度における資産捕捉においても、自己申告と福祉事務所等の調査に依存し、国民の金融資産情報の当局への定期報告は行われていない。医療費自己負担への資産勘案を検討する際は、非常に多くの難しい論点に照らした政策判断が求められる。

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