サマリー
◆2017年12月14日、自由民主党・公明党は「平成30年度税制改正大綱」(大綱)を公表した。本稿は、大綱における個人所得課税の改正について解説する。
◆大綱では、①多様な働き方を自由に選択できるようにすること、②所得再分配機能の回復を図ること、③人的な事情に配慮すること、の3点から所得税を見直すとした。具体的には、①のために所得の種類別から基礎控除への振替、②のために給与所得控除の上限引下げと公的年金等控除の見直し、③のために所得金額調整控除の導入を行うとした。
◆これらの改正により増税となるのは、主に、年収850万円超の給与所得者で子育て・介護等の事情のない者(約204万人)、公的年金等の受給者で年金以外の所得が1,000万円超である者(約15万人)、所得が2,400万円超である者(約23万人)などである。他方、減税となるのは所得が2,400万円以下の自営業者等(200万人強)である(カッコ内の人数はいずれも大和総研による推計値)。政府は、国・地方合わせて差し引き862億円の増収を見込んでいる。
◆大綱で子育てや介護等の事情を考慮して負担増とする者を絞り込んでいるが、現行比の負担増減を重視するあまり税制を複雑にしている面もある。2019年度以後の税制改正では、国民的な議論を経て所得税のあるべき姿が示されることを望みたい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
事業承継税制の拡充・資産税逃れ対策等
平成30年度税制改正大綱解説④—相続関係税制編
2018年01月26日
-
消費税増税等の家計への影響試算(2017年10月版)<訂正版>
2011年から2020年までの家計の実質可処分所得の推移を試算
2017年10月12日
-
法人税改正で3%賃上げは実現するか
平成30年度税制改正大綱解説①-法人税編
2017年12月21日
-
スピンオフ税制の適格要件の緩和等
平成30年度税制改正大綱解説②—組織再編税制編
2017年12月26日
-
外国税額控除の改正で投信のリターンが改善する
平成30年度税制改正大綱解説③-証券・金融税制編
2017年12月29日
-
2018年以降の制度改正予定(税制編)
2018年01月09日
同じカテゴリの最新レポート
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
-
「103万円の壁」与党修正案の家計とマクロ経済への影響試算(第5版)
所得税の課税最低限を160万円まで引き上げる与党修正案を分析
2025年03月19日
-
平成以降の家計の税・社会保険料負担の推移
『大和総研調査季報』2025年新春号(Vol.57)掲載
2025年01月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日