法人税改正で3%賃上げは実現するか

平成30年度税制改正大綱解説①-法人税編

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2017年12月21日

サマリー

◆2017年12月14日、自由民主党・公明党は「平成30年度税制改正大綱」(大綱)を公表した。本稿は、大綱における大企業に係る法人税の改正について解説する。


◆大綱では、賃上げと生産性向上を実現するため租税特別措置(租特)を見直すとした。所得拡大促進税制・研究開発税制・地域未来投資促進税制の要件等が見直され、新たに情報連携投資等促進税制を創設するとした。これら4つの生産性向上に関連する租特(生産性4租特)により、最大で法人税額の90%の税額控除が可能となる。


◆2016年度の税制改正により、2018年度から法定実効税率(標準税率による、以下同じ)は29.74%に引き下げられる。大綱による改正後の所得拡大促進税制と情報連携投資等促進税制を最大限活用した場合、これらを考慮した実効税率は20.39%となり、OECDやアジア諸国等と十分競争できる水準になる。もし仮に生産性4租特をフル活用できたとすると、実効税率は8.70%まで下がることとなる。


◆所得拡大促進税制を適用するには、継続雇用者の平均年収ベース(賞与、残業代等を含む)で対前年比3%以上の賃上げが求められる。労働基準法の改正等も考慮すると、企業には、生産性を向上して残業時間を削減し、かつ、残業代の削減分以上の賃上げを行って、従業員の年収を引き上げていくことが求められている。

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