2018年06月05日
サマリー
◆2018年5月24日、トランプ大統領は、ドッド・フランク法の一部を改正することなどを内容とする「経済成長、規制緩和、消費者保護法」(Economic Growth, Regulatory Relief, and Consumer Protection Act:以下、改正法)に署名した。改正法は、米国議会において超党派で可決されたものであり、2010年のドッド・フランク法制定以後初めての大幅な変更とされる。
◆改正により、厳格な規制や監督の対象となる銀行持株会社の基準が、連結総資産500億ドル以上から2,500億ドル以上に引き上げられた。ただし、FRBは同1,000億ドル以上の銀行持株会社については、裁量により、厳格な規制の対象とすることができるとされている。また、外国銀行については、引き続き、厳格な規制や監督の対象になるものと思われる。
◆今回の改正は、中小金融機関に対する規制を緩和し、地域企業への貸出が増加することにより雇用創出、ひいては米国経済の活性化を目指すものとされている。もっとも、米国の企業部門については、潤沢なキャッシュフローを背景に、そもそも借入による資金調達ニーズが大きくないと言われており、実際に地域企業への貸出が増加するかについては今後注視する必要があるだろう。
◆下院では、別途金融規制に関する法案が提案・審議されており、引き続き、金融規制改革の議論は続くものと思われる。さらに、FRBやSECなどの金融規制当局もトランプ大統領指示のもと、大規模金融機関の規制緩和となる規則を策定・提案している。金融危機以後に強化されてきた金融規制がどのように変更されるのか、その動向が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
小規模投資信託削減のための約款変更・繰上償還がより容易に
投信法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)の公表
2025年05月14日
-
英国が非上場株式の流通市場を創設へ
非上場株式のセカンダリー取引を促進する「PISCES」とは
2025年04月03日
-
外為法の対内直接投資審査制度の改正案
中国関連組織が投資する場合を念頭に、審査対象となる範囲を拡大
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日