2012年09月14日
サマリー
◆2012年8月7日、金融庁は、バーゼル規制に関して、主に国際統一基準行を対象として、「第2の柱」(金融機関の自己管理と監督上の検証)に係る監督指針(本稿では説明の便宜上「主要行等向けの総合的な監督指針」に限定)の一部改正(改正監督指針)を公表している(改正案の公表は2012年6月6日)。
◆改正監督指針では、主に、(1)自己資本の充実度の評価、(2)コンティンジェント・キャピタル条項、(3)償還又は買戻しのための資本調達(再調達)、(4)「意図的持合い」の範囲、(5)資本バッファー・流動性比率・レバレッジ比率、(6)保証及びクレジット・デリバティブを用いた信用リスク削減手法に関連する項目等が明確化されている。
◆(1)では、普通株式等Tier1資本の調達がその他包括利益累計額に過度に依存しないよう求めている。
◆(2)では、コンティンジェント・キャピタル条項のゴーイング・コンサーン水準を、普通株式等Tier1比率5.125%以上に設定すべき旨明らかにしている。
◆(4)では、ダブル・ギアリングの対象となる「意図的持合い」の範囲として、「相互に資本増強に協力することを主たる目的の一つとしている」ことを明確化している。
◆(5)では、「告示」の改正(2012年3月30日)には反映されていないバーゼルⅢの合意事項に向けた体制整備の必要性を明確化している。
◆(6)では、保証やクレジット・デリバティブを用いた規制裁定を防止すべく、銀行及び監督当局に対して一定の考慮を要請している。
◆改正監督指針は、2013年3月31日から適用される。
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