2012年05月24日
サマリー
◆3月30日、金融庁はバーゼルⅢを踏まえた自己資本比率に関する告示の改正を公表した。2013年3月31日から適用される。本稿では、改正告示のうち、リスク捕捉の強化について説明する(普通株式等Tier1比率、Tier1比率、総自己資本比率については、それぞれ4月12日付、4月19日付、4月25日付拙稿参照)。
◆金融危機の際に、ある金融機関の破綻リスクが他の金融機関に波及するというシステミック・リスクが生じたことを受けて、改正告示では、総資産が1,000億ドル以上の金融機関などに対するエクスポージャーの信用リスク・アセットを計算する際、相関係数を1.25倍する見直しを行っている。
◆また、「信用評価調整(CVA)」リスク相当額を信用リスク・アセットに加算する見直しも行われている。CVAとは、欧米の会計基準上、デリバティブ取引が取引相手の格下げなどの信用力の低下によって価値が下落した場合に、損失額の期待値の割引現在価値を織り込む処理を指す。金融危機の際、CVAによる損失が巨額となったが、従来のバーゼル規制ではCVAリスクが織り込まれていなかったため、それを見直したわけである。
◆他には、担保管理の強化、外部格付(格付機関による格付)への依存の見直し、取引相手のエクスポージャー額が増大すると同時に、それによってデフォルト率も高まる(両者が相関関係を持つ)ことによって大きなリスクが発生するという「誤方向リスク」への対応もなされている。なお、バーゼルⅢ規則文書には清算機関等向けエクスポージャーの取扱いの変更も盛り込まれているが、改正告示には盛り込まれていない(バーゼル銀行監督委員会においてまだ合意に達していないため)。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
バーゼルⅢが銀行に与える影響に関する調査
世界大手行全体で、実質的最低水準達成に4,856億ユーロ不足(昨年6月末時点)
2012年05月25日
-
バーゼルⅢ告示(3) 総自己資本比率(連結)
-
バーゼルⅢ告示(2) Tier1比率(連結)
-
バーゼルⅢ告示(1)普通株式等Tier1比率(連結)
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日