2012年04月19日
サマリー
◆2012年3月24日、EUは、空売りとCDSに関する規制の最終ルール(レギュレーション)を公表している。
◆レギュレーションは、空売りポジションに関する透明性の強化、ネイキッド・ショート・セリングに対する制約、ネイキッドのソブリンCDSの禁止、規制管轄当局およびESMAの非常権限を柱としている。
◆レギュレーションの最大の目玉は、ネイキッドのソブリンCDSの禁止である。欧州委員会による法案には含まれていなかった制約である。
◆ネイキッドのソブリンCDSとは、デフォルト・リスクおよび価格下落リスクのいずれもヘッジしない、投機目的のソブリンCDSをいう。
◆禁止を免れる「ヘッジ目的」の詳細は、欧州委員会による細則(2012年半ばに採択される見込み)にて定められる。
◆細則を定める欧州委員会へのアドバイスをするESMAは、クロスボーダー・ヘッジを目的としたソブリンCDS(たとえば、ギリシャ国債に対して大きなエクスポージャーを有するフランスの銀行に対するエクスポージャーをヘッジすべく、ギリシャ国債のCDSを購入しようとする場合)を認めない旨提案している。
◆こうしたESMAの意向に対しては、このようなケースの取引が投機目的であるとして禁止されるというのは不条理であるという批判が寄せられている。
◆最終的に、クロスボーダー・ヘッジを目的としたソブリンCDSが認められるか否かは、欧州委員会による細則にて定められることとなろう。そのため、これが採択されるまで、今後も重要な議論が継続されることとなる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
空売り規制の見直し、11月5日施行
2013年09月12日
-
空売り規制見直しの政・府令案
2013年05月23日
-
空売り規制(時限的措置)の最終(?)の延長
2013年04月24日
-
空売り規制の総合的な見直し
2013年03月15日
-
空売り規制強化、12年10月31日まで延長
2012年04月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日