サマリー
◆2025年1月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月差+14.3万人と減速し、市場予想(Bloomberg調査:同+17.5万人)を下回った。年次改定で2024年全体の雇用者数は下方修正されたが、2024年11・12月分は大幅な上方修正となった。その結果、雇用者数の3カ月移動平均は同+23.7万人と3カ月連続で加速し、好不調の目安となる同+20万人を2カ月連続で上回った。失業率に関しては4.0%となり、市場予想(Bloomberg調査:4.1%)を下回る(良い)結果となった。雇用者数を中心に足元は振れが大きくなっている点に注意が必要だが、雇用環境の基調としては底堅く推移しているといえよう。
◆雇用環境の先行きについては、悪天候やカリフォルニア州における山火事被害からの回復が短期的に押し上げ要因となり得る。他方で、トランプ政権の政策が今後の雇用指標のかく乱要因となり、基調が読みにくくなり得る点には注意が必要だ。トランプ政権の厳格な不法移民政策により、不法移民の新規流入は一層抑制されるとみられる。それに伴い、雇用者数の増加もペースダウンすると予想される一方で、新規の労働供給が減少することで失業率も上昇しにくくなるとみられる。また、トランプ政権による政府機関の再編・人員削減も今後の雇用指標に影響を及ぼし得る。この他、追加関税措置がエスカレートすれば、企業収益を圧迫することで雇用環境の悪化要因となり得る。
◆1月の雇用統計は雇用環境が底堅いというFRBの見方を変えるものではない。そのため、引き続きFRBの注目点はインフレの動向とトランプ政権の政策といえよう。どちらも不確実性が高い中、FRBの様子見モードが続きやすいとみられる。
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