サマリー
◆2024年10月の米雇用統計は、失業率は前月から横ばいの4.1%となった一方で、非農業部門雇用者数は前月差+1.2万人と前月から大幅に伸びが鈍化し、市場予想(Bloomberg調査:同+10.5万人)を大幅に下回った。雇用者数については、特殊要因である①ハリケーン②ボーイング等のストライキ③大統領選挙の不透明感が下押ししたとみられる。また、事業所調査の回答率は低水準であり、来月の雇用統計で修正幅が大きくなり得る点にも注意を要する。10月の雇用統計は総じてかく乱要因が多いことから、雇用環境が緩やかな悪化から急激な悪化に転じているかの判断は、11月19日に公表される州別の雇用統計や次回以降の雇用統計も合わせて評価する必要があろう。
◆先行きの雇用統計に関して、ボーイングのストライキが終結すれば、雇用者数の押し上げ要因となる。また、ハリケーンの影響についても、過去の事例と同様に、被災地域の復旧に伴い雇用者数の伸びは回復していくことが想定される。他方で、11月5日の大統領選挙の影響については、当面は不確実性が高い。今回の大統領選挙では新大統領がトランプ氏・ハリス氏のどちらになっても現職から交代となるため、企業が政策の行方を見極めるために当面は様子見姿勢を続けることで、雇用者数の回復も緩やかになり得る点には注意が必要だろう。
◆10月の雇用統計では雇用者数が大幅に鈍化したものの、特殊要因も多いとみられる。金融政策運営については、FRBが今回の結果で過度に景気への懸念を強めるとは考えにくい。また、失業率については、直近のSEP(FOMC参加者の経済見通し)で示された2024年第4四半期の失業率予想である4.4%を下回っていることからも、大幅利下げは見込みにくい。足元の雇用環境を評価しづらい中、FRBは漸進的な対応を取るとみられ、11月6-7日のFOMCでは0.25%ptの利下げを決定すると予想される。
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