サマリー
◆2018年7月の非農業部門雇用者数は前月差+15.7万人と、2018年3月以来の低い伸びに留まり、市場予想(Bloomberg調査:同+19.4万人)を下回った。しかし、完全雇用下で労働市場への新規参入を吸収するには、毎月10万人程度の伸びで十分であることに鑑みれば、雇用者数の増加ペースは十分底堅い。
◆家計調査による7月の失業率は前月差▲0.1%pt低下の3.9%となり、市場予想通りの結果であった。就業者数が同+38.9万人と大きく増加したことに加えて、非労働力人口が同+9.6万人と増加に転じたことも、失業率低下の要因となった。
◆7月の民間部門の平均時給は、前年比+2.7%と市場予想通りの結果となった。失業率が低水準にあるにもかかわらず、賃金の伸びは引き続き緩やかなものに留まっている。また、6月の時点で既に実質賃金の伸びは前年比0%まで減速しており、インフレ率との関係で見ても、賃金上昇率は物足りない状況が続いている。
◆労働市場では需給ひっ迫による人員確保の難しさが大きな問題となっており、活用できる労働力が限られる中、雇用者数の増加ペースが今後加速するとは考え難い。また一方で、企業の労働需要が先行き鈍化する可能性が高まっている点にも注意が必要である。関税、貿易戦争に対する懸念は足下で一層高まっており、先行きに対する不透明感の高まりが企業景況感の悪化、採用意欲の低下をもたらす可能性があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日