サマリー
- 実質GDP成長率見通し:22年度+2.2%、23年度+1.6%:本予測のメインシナリオにおける実質GDP成長率は22年度で+2.2%、23年度で+1.6%(暦年ベースでは22年で同+1.6%、23年で同+2.2%)と見込む。インバウンド(訪日外客)を含む国内消費の回復、半導体不足の解消による自動車の挽回生産、緩和的な財政・金融政策が景気を下支えすることで、世界経済が減速する中でも23年度にかけて潜在成長率を大幅に上回るプラス成長が続くだろう。政府の総合経済対策は実質GDPを7兆円程度押し上げると想定している。22年春から急速に進んだ円安ドル高は、米国の金利先高観が解消するとみられる23年に円高基調へと転じる可能性がある。国内のインフレは持続性の低い「コストプッシュ型」の要素が依然として強く、円安是正のために日本銀行が利上げを行うことは経済への悪影響の方が大きい。23年春闘で大幅な賃上げが実現すれば、金融政策の出口戦略に関する議論が活発化するだろう。
- 論点①:世界同時不況リスクと各国・地域経済への影響:当社のメインシナリオでは日本経済の回復基調は当面続くが、海外経済が下振れする懸念は強まっている。米国の失業率大幅上昇、中国のロックダウンと不動産市場大幅調整、ユーロ圏の信用収縮などのリスクが指摘でき、23年にこれらが同時に発生すると仮定した場合、世界経済は深刻な不況に陥る。日本経済も大きな影響を受け、実質GDPは最大5%pt以上下押しされて大幅なマイナス成長となると推計される。新興国やユーロ圏では、さらに大きな落ち込みに見舞われると考えられる。
- 論点②:希望出生率を実現するために必要な政策:政府が掲げる「希望出生率1.8」の実現には、希望する結婚・出産を阻む経済的要因を取り除く必要があり、①現金または現物の給付の拡充、②結婚や子育てを希望する世帯の所得の引き上げ、の2つの施策が考えられる。①について比較的優先度が高いのは、現状で支援が手薄になっている「3歳未満の在宅育児」に対する支援だろう。②については、結婚・出産を機に一度退職した女性を含め、「夫婦とも正規雇用での共働き」を実現させることが重要だ。男性の家庭活躍の推進に加え、柔軟な働き方の促進、同一労働同一賃金、職業訓練の充実などに取り組む必要がある。これらの政策をパッケージとして実行することができれば、出生率は1.82程度まで上昇する可能性がある。
- 日銀の政策:コアCPIは資源高および円安を主因に22年度に前年比+2.6%、23年度には同+1.8%を見込む。足元では3%台半ばまで上昇しているものの、持続性の低い「コストプッシュ・インフレ」の色合いが強く、生鮮食品とエネルギーを除いたCPIは24年1-3月期で同+1%程度とみている。2%の物価安定目標の達成は見通せず、日銀は現在の金融政策の枠組みを維持すると想定している。
【主な前提条件】
(1)名目公共投資は22年度+2.4%、23年度+3.7%と想定。
(2)為替レートは22年度137.8円/㌦、23年度140.2円/㌦とした。
(3)原油価格(WTI)は22年度91.5ドル/バレル、23年度81.6ドル/バレルとした。
(4)米国実質GDP成長率(暦年)は22年+1.9%、23年+0.7%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度『JC-STAR』の開始
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月16日
-
2025年度のPBはGDP比1~2%程度の赤字?
減税や大型補正予算編成で3%台に赤字が拡大する可能性も
2025年01月15日
-
『ICTサイバーセキュリティ政策の中期重点方針』の公表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月15日
-
緩やかな回復基調、地域でばらつきも~消費者の節約志向や投資意欲の変化を注視
2025年1月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年01月14日
-
金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドラインとセキュリティ人材育成
2025年01月16日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日