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第210回日本経済予測(改訂版)

強まる変異株の脅威、経済正常化とその後の課題~①日本の長期停滞、②米金利上昇リスク、③グリーン、を検証

2021年09月08日

リサーチ本部 副理事長 兼 専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

経済調査部 シニアエコノミスト 佐藤 光

経済調査部 主任研究員 山崎 政昌

経済調査部 シニアエコノミスト 末吉 孝行

経済調査部 シニアエコノミスト 橋本 政彦

経済調査部 エコノミスト 久後 翔太郎

経済調査部 研究員 永井 寛之

経済調査部 エコノミスト 鈴木 雄大郎

経済調査部 エコノミスト 小林 若葉

経済調査部 研究員 和田 恵

経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬

経済調査部 研究員 吉田 智聡

経済調査部 研究員 瀬戸 佑基

サマリー

  1. 実質GDP成長率見通し:21年度+3.5%、22年度+3.3%:本予測のメインシナリオでは、全国民の約8割がワクチンの2回接種を10月末に終えると想定している。経済正常化が21年秋から進むことで景気の回復ペースは加速し、実質GDP成長率は21年度で+3.5%、22年度で+3.3%と見込む。だが先行き不透明感は強く、ワクチン接種率と変異株の動向に大きく左右される。仮にワクチンの効果が半減する変異株が流行した場合、22年初に5回目の宣言発出を余儀なくされ、経済損失は3.3兆円程度と1回目の宣言時と同規模になるとみられる。先進国を中心に進んだ経済正常化は大幅に後退し、変異株に対応するワクチンの開発・普及が進むまで経済活動は停滞する恐れがある。
  2. 論点①:ポストコロナで直面する日本経済の構造問題:感染収束後の景気回復は比較的円滑に進む見込みであるが、78兆円程度と推計される企業の過剰債務や「追い貸し・金利減免」企業の増加への対応が遅れれば、経済成長率の低下を招く恐れがある。ポストコロナでは「内需の停滞」という感染拡大前からの課題に改めて取り組む必要がある。企業の期待成長率の低さが過小投資につながっており、背景には働き手の手取り賃金の伸び悩みや将来不安の強まりなどに起因した個人消費の低迷がある。将来不安に伴う消費の抑制額は2000年以降の累積で58兆円に上る。加えて、諸外国との比較では労働生産性の「水準」の低さも目立っており、特に非製造業の生産性向上に向けてデジタル化の推進が求められる。
  3. 論点②:米国の長期金利上昇と世界経済:仮に米国の長期金利が急速に上昇すれば、グローバルマネーフローが変調をきたし、新興国への資金流入が鈍化して経済成長が押し下げられる。新興国の経済混乱や債務不履行に発展すれば、保有債権や直接投資を通じて先進国に悪影響が及ぶリスクも出てくるだろう。一方で米国では、過去の名目GDPとの関係からは現在の株価水準は上限近辺とも考えられ、金利が急騰した場合に大きく調整する恐れがある。同様に、金利に敏感な住宅価格も下落する可能性が高い。資産価格の急落は世界に波及し、米欧を中心に個人消費の減少を招くだろう。これらの新興国への資金流入の減少や逆資産効果の影響を考慮して試算すると、米国の長期金利が5%にまで上昇した場合、世界経済はマイナス成長に陥ると見込まれる。
  4. 論点③:グリーン成長戦略 再エネ導入と家計の負担:第6次エネルギー基本計画素案では再エネの大量導入目標が示された。その発電比率目標に基づいて、2030年度の家計の負担を試算した。まず、2030年度の電力消費量を約8,800億kWh(19年度比▲5.1%)と推計した。それをもとに一世帯あたりの再エネ賦課金は19年度から30年度に41%増加し、電気料金全体は5%上昇するという試算結果を得た。国民負担は増加基調を維持するものの、再エネの発電コストが低下していることから、負担の増加ペースは鈍化する見通しである。国民負担軽減のためには、コストが低下してきた電源の有効活用と一段の発電コスト削減が重要となろう。
  5. 日銀の政策:21年度のコアCPIは携帯電話通信料の引き下げに加え基準改定の影響もあり前年比▲0.2%まで低下するものの、22年度は同+0.6%に高まろう。ワクチン接種の進展により経済活動が正常化に向かう中、物価の基調は緩やかな上昇にとどまる見込みである。日銀はコロナ危機対応策を段階的に縮小させる一方、極めて緩和的な金融政策を維持するとみている。

【主な前提条件】
(1)公共投資は21年度+2.0%、22年度+1.9%と想定。
(2)為替レートは21年度109.3円/㌦、22年度109.7円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は21年+6.2%、22年+4.5%とした。

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