サマリー
- 実質GDP成長率見通し:19年度+0.4%、20年度+0.4%、21年度+0.7%:19年10-12月期の実質GDP成長率は市場予想を下回る大幅なマイナスとなった。さらに20年1-3月期は新型肺炎による景気の下押し圧力がかかるため、19年度の実質GDP成長率見通しを0.5%pt引き下げた。当面の最大のリスクは新型肺炎だ。仮に感染拡大が長期化すると、20年度の日本経済はマイナス成長に転じる可能性がある。本予測のメインシナリオでは、新型肺炎が3カ月程度流行し、20年4-6月期中に経済活動が正常化すると想定している。中国経済の回復やシリコンサイクルの持ち直しに加え、国内では拡張的な財政政策や労働需給のひっ迫で内需が底堅く推移し、緩やかながらも景気の回復基調が続くとみている。
- 論点①:サイクル面から見た景気の先行き:日米中3カ国では概ね「中国→米国→日本」の順番で景気回復となるパターンが見られ、2020年は日本の回復期入りが期待される。当面は輸出の回復がポイントとなろう。業種別では、半導体需要の回復に伴う電子部品・デバイスの生産増が期待される一方、家計所得の影響が大きい輸送機械は横ばいで推移し、両者の動きが乖離した状況が続くと想定される。だが、業種間の波及構造を踏まえた当社の試算によれば、稼働率上昇による資本財需要の増加などもあり、鉱工業生産全体は緩やかな増加基調が続こう。ただし、新型肺炎の影響などによって、前提となるシリコンサイクルが下振れするリスクには細心の注意が必要である。
- 論点②:消費増税後の個人消費の先行き:前回増税時は、購買力が低下したことで低所得世帯を中心に消費が低迷したが、今回は軽減税率制度や、幼児教育・保育無償化などの社会保障充実策により購買力が高まったため、低所得世帯の消費は安定している。対照的に、今回は高所得者世帯の買い控えが消費を下押ししており、前回とは異なる特徴が見られる。個人消費は緩やかな増加基調が続く見込みだが、所得の伸び悩みや節約志向の高まり、消費増税対策の段階的終了等により、消費の伸びは幾分低下するだろう。なお、非製造業ではこのところ労働生産性以上に実質賃金が上昇しており、企業の負担が増している。今後の雇用調整リスクなどには注意が必要だ。
- 論点③:2020年のリスクを検証する:米国大統領選挙に向け、トランプ大統領は製造業のテコ入れが課題となる。実行可能な政策が限られる中、ドル安志向を強める可能性に注意が必要である。選挙の結果、仮に政権交代となれば、トランプ減税からの巻き戻し、規制強化が経済のリスクとなろう。中東情勢緊迫化の経済面のリスクは原油価格の高騰となる。リスクオフの円高と合わせて最大で実質GDPを▲0.8%程度下押しする懸念があろう。東京五輪後の建設需要の剥落懸念については、供給力不足による受注残の高止まりなどから、腰折れは回避されよう。
- 日銀の政策:予測期間中のCPIは、20年度はゼロ%台前半、21年度はゼロ%台半ばで推移すると見込まれるため、日銀は非常に緩和的な金融政策を継続するとみている。米欧中央銀行の金融緩和姿勢が強まる中、当面、小幅な追加金融緩和が視野に入る展開が予想される。
【主な前提条件】
(1)公共投資は19年度+5.7%、20年度+1.4%、21年度+0.0%と想定。
(2)為替レートは19年度108.9円/㌦、20年度109.7円/㌦、21年度109.7円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は20年+2.0%、21年+2.0%とした。
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