サマリー
◆大和総研では日本経済中期予測を1年ぶりに改訂し、今後10年間(2016~2025年度)の成長率を、年率平均で名目+1.3%、実質+0.8%と予測する。物価上昇率は総じて緩やかに加速する見通しだが、日銀のインフレ目標の達成は困難である。引き続き、日銀による積極的な金融緩和が継続されると予測する。
◆世界経済の平均成長率は+3.2%を見込む。Fedは非常に緩やかなペースで引き締めを続けるとみられるが、特に予測期間前半には下振れリスクが多く、不確実性が高い。世界経済の動向次第ではFedの利上げ方針は調整を余儀なくされるだろう。また、原油安も波乱要因の一つである。
◆日本の設備投資は、付加価値の高い機械産業やサービス業においては、今後の設備投資が期待できそうだが、足元の製造業における高い不確実性は設備投資を抑制するだろう。研究開発投資による収益性の向上とイノベーションや政策等に伴う不確実要因を取り除く経済・社会制度の構築が、今後、日本で設備投資を増やすためには必要となる。
◆今後の超少子高齢化やマクロ経済環境の変化を踏まえると、消費は耐久財や家事関連、保健医療などで拡大するが、生鮮食品、被服履物、書籍では市場の縮小は避けられない。今後暫くは財産所得が消費を下支えするが、消費の底上げには、労働所得を高める成長戦略や雇用制度改革、世代間のバランスのとれた財政・社会保障改革などが急務。
◆足元の労働需給のひっ迫は非正規雇用で起きている。女性や高齢者には多様な就業形態を認める雇用制度、就業率の低い25 ~ 44 歳の男性には技能訓練の再教育などの支援が必要。特に女性の高技能労働者の数は急速に増加。ただ時間当たり実質賃金は男性より低く、労働力不足の中でこれら女性を中心に賃金が上昇する可能性は十分にある。
◆目次
- 予測のポイント
- 今後10年の世界経済
- 世界経済見通し
- 世界貿易の成長は足元で減速
- 原油価格の想定
- 今後10年の日本経済
- 日本経済見通しの概要
- 設備投資の今後の見通しと望ましい設備投資のあり方
- 貿易・サービス収支と経常収支
- 消費:超高齢社会で消費の増加は可能か?
- 世帯数がピークアウトするなかでの住宅市場の行方
- 所得・雇用:労働所得および財産所得の今後の見通し
- 人材不足が課題の「介護離職ゼロ」
- リスクシナリオを考える
- モデルの概説とシミュレーション
- 今後10年の世界経済
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