設備投資が伸び悩む原因(1)

業種間の資本蓄積の歪みと製造業が直面する不確実性

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2016年01月27日

サマリー

◆足元で経済成長に必要な資本ストックが伸び悩んでいる背景として、新規の資本蓄積を促す、減価償却を除いた部分の設備投資(純設備投資)が趨勢的に低下していることが挙げられる。資金制約はまだ厳しくないものの、今後は超高齢社会の加速等による資金制約で設備投資が伸びない場合もありうる。


◆設備投資を促すには、企業の将来の収益見通しを改善させる環境を創りだすことに加えて、設備投資を行う上で不確実な要因を取り除くことが重要だ。


◆かつては採算の取れない過剰な資本により日本企業の資本収益率は低下してきたが、問題は現在でもそれほど資本収益率が改善していないことだ。日本の資本係数は上昇を続けており、1990年代以降、米国の資本係数を上回っている。資本ストックが収益性に見合う分野へ最適に配分されておらず、収益率の低い分野で資本が過剰に積み上がっている可能性がある。


◆設備投資の最も重要な決定要因として知られるトービンのqを使って分析すると、収益性の面から設備投資が出やすいのは、食料品、その他の製造業(プラスチック製品、ゴム製品等)、化学工業、生産用(建設・産業・加工機械等)・業務用(精密機械等)・輸送用機械器具、ガス・熱供給・水道、建設、不動産等、卸売・小売、サービス等が挙げられる。一方、パルプ・紙・紙加工品をはじめ、繊維、木材・木製品、印刷・同関連、鉄鋼、石油・石炭製品、農林水産業などは設備投資が出づらい状況となっており、これらの業種では今後も資本ストックを除却していく圧力が強いと言える。


◆不確実性の指標として実質売上高(前年比)の過去5年間の標準偏差を見ると、非製造業の不確実性の水準はここ数年低下している一方、製造業の不確実性はリーマンショック以前と比べても相当高いままだ。資金制約がなくて収益が改善していても、足元のような中国経済等への懸念を示す企業が増えている状況では、製造業を中心に設備投資が大きく増えることは難しいものと思われる。

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