第176回日本経済予測

「アベノミクス」で日本経済は再生するか?

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2013年02月19日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 齋藤 勉
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎

サマリー

  1. 経済見通しを修正:2012年10-12月期GDP一次速報を受け、2012-14年度の成長率見通しを改訂した。当社は、1月18日に安倍政権成立の影響を勘案し経済見通しを暫定的に上方修正している。今回の改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+0.9%(1月18日時点の暫定予想:同+1.3%。安倍政権成立前の予想:同+1.0%)、2013年度が同+2.7%(同:同+2.2%。同:同+1.1%)、2014年度が同+0.4%(1月18日時点の暫定予想:同+0.3%)である。大型補正予算の編成や、日銀の「インフレ目標」導入に伴う円安・株高の進行などを総合的に考慮し、経済見通しの修正を行った。
  2. 「アベノミクス」で日本経済は再生するか?:本予測では、安倍政権の経済政策(いわゆる「アベノミクス」)について多面的に考察した。「アベノミクス」は、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、という「三本の矢」から構成される。日本経済復活の起爆剤となり得る経済政策であり、その基本的な方向性は極めて適切である。今回のレポートでは、国民が「アベノミクス」に対して抱いている4つの懸念について検証した。第一に「財政規律の維持」に失敗すると、「トリプル安(債券安・株安・円安)」を招くリスクがある。第二に、現時点では「中長期的な経済体質の改善・構造改革」が不十分だとの指摘が根強い。第三に、インフレが進行するなか、雇用者の所得が増加しないという懸念が存在する。第四に、「アベノミクス」は大企業にはメリットがあるが、中小企業には恩恵が行き渡らないとの批判もある。当社は、上記の4つの懸念を検証した結果、今後の安倍政権の課題として、とりわけ最初の2点に対処すべきだと考えている。すなわち、①選別的に公共投資を行い財政規律を維持すること、②規制緩和、TPPへの参加、法人実効税率の引き下げなど日本経済の体質を抜本的に改善する政策がとられること、という2点こそが、今後の「アベノミクス」成功のカギを握っているのである。
  3. 日本経済のメインシナリオ:日本経済は2012年3月をピークに景気後退局面に入ったものの、2012年11月をボトムに景気は底入れしたとみられる。今後に関しても、日本経済は、①米国・中国経済の持ち直し、②復興需要の継続や大型補正予算の編成、③日銀の「インフレ目標」導入を受けた円安・株高の進行、などに支えられて景気拡大が継続する見通しである。上記③に関連して、当社は、現状の為替市場は過度な円高が修正する局面にあると捉えている。また、実体経済との比較からは、現状の株価が依然として過小評価された水準にある可能性が示唆される。
  4. 日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①イタリア・スペインの政局不安などをきっかけとする「欧州ソブリン危機」の再燃、②日中関係の悪化、③米国の財政問題、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要である。
  5. 日銀の金融政策:2013年1月に日銀が「インフレ目標」導入に踏み切ったことは一定の評価ができる。今後、日銀は、リスク資産(ETF等)の購入に前向きに取り組むなど、一層の金融緩和を行う必要がある。さらに、市場とのコミュニケーション能力の向上なども課題となるだろう。

【主な前提条件】
(1)公共投資は12年度+14.7%、13年度+12.3%、14年度▲15.8%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは12年度82.9円/㌦、13年度95.0円/㌦、14年度95.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は13年+2.0%、14年+2.6%とした。

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