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第173回日本経済予測(改訂版)

-リスク要因を検証([1]経常収支赤字化、[2]ギリシャのユーロ離脱等)-

2012年06月08日

調査本部 常務取締役 調査本部副本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

経済調査部 シニアエコノミスト 長内 智

経済調査部 エコノミスト 増川 智咲

齋藤 勉

サマリー

(1)経済見通しを改訂:2012年1-3月期GDP二次速報を受け、2012-13年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+2.4%(前回:同+2.3%)、2013年度が同+1.3%(同:同+1.3%)である。

(2)日本経済のメインシナリオ:今後の日本経済は、メインシナリオとして、(1)東日本大震災発生に伴う「復興需要」、(2)米国・中国を中心とする海外経済の持ち直し、(3)日銀の追加金融緩和が見込まれること、という「三本の矢」に支えられて、緩やかな景気拡大が続く見通しである。

(3)日本経済の中長期的リスク:「経常収支赤字化」:本予測では、日本経済が抱える様々なリスク要因を多面的に検証した。日本経済が抱える中長期的なリスク要因は「経常収支赤字化」である。当社は、わが国の中長期的な経常収支の動向に関する定量的なシミュレーションを行った。基本シナリオでは、2020年時点でわが国の経常収支は24兆円程度の黒字を維持する見通しである。リスクシナリオとして、円高、原油高、世界経済の悪化などが複合的に発生するケースでも、よほど劇的な変化が起きない限り、わが国の経常収支は容易には赤字化しない公算である。ただし、製造業の海外流出が加速し「悪い空洞化」が進行する場合には、将来的な経常収支赤字化の可能性が高まるものと考えられる。わが国の政策当局は、将来的な日本経済を取り巻く環境の激変を念頭に置き、経済の「供給サイド」の政策と、財政再建を中核に据えた適切な政策対応を講じる必要がある。

(4)日本経済の短期的リスク:ギリシャのユーロ離脱など:2012-13年度にかけて日本経済が抱えるリスク要因としては、(1)ギリシャのユーロ離脱などを受け「欧州ソブリン危機」が深刻化、(2)地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、(3)円高の進行、(4)原発停止に伴う生産の低迷、の4点に留意が必要である。第一に、欧州諸国の国債のヘアカット率に関する3つのシナリオを設定した上で、日本経済に与える影響を算定したところ、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられるリスクがある。今後、ギリシャのユーロ離脱などをきっかけに「欧州ソブリン危機」が深刻化した場合、日本経済が「リーマン・ショック」並みの打撃を受ける可能性を否定し得ない。第二に、イラン情勢緊迫化などを背景に原油価格が高騰した場合、日本企業の交易条件悪化などを通じて、日本経済が「スタグフレーション(不況下の物価高)」に陥るリスクがある。第三に、ドル円相場は、当面、比較的狭いレンジ内で推移する見通しであり、急速な円高・ドル安は回避されるものと考えられる。ただし、「欧州ソブリン危機」の深刻化などを受け「質への逃避」の動きが強まり、円相場が独歩高になるリスクには一定の留意が必要となるだろう。第四に、わが国ですべての原発が停止した状態が続くと、実質GDPに対しては▲0.5%~1%超の低下圧力がかかる可能性がある。

(5)日本銀行の金融政策:日本銀行は少なくとも2014年度いっぱい、政策金利を据え置く見通しである。円高が進行するなど、景気下振れ懸念が強まる局面では、日本銀行が、拘束力のあるインフレターゲットの導入や、基金の残高積み増しなどを含む、さらなる金融緩和策に踏み切る可能性が生じよう。

【主な前提条件】
(1)公共投資は12年度+7.6%、13年度▲3.4%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは12年度79.0円/ドル、13年度79.0円/ドルとした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は12年+2.2%、13年+2.6%とした。

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