2026年04月24日
サマリー
◆近年、新たな実装領域として「フィジカルAI」への関心が高まっている。フィジカルAIは、ロボット等を通じて現実世界での行動や作業まで担うAIであり、従来の業務自動化とは異なる新たなAI活用の形といえる。ただし、現実世界で動く以上、AI技術の進展だけで自然に普及が進む分野ではない。
◆国際的には、米国は大規模な計算資源を背景に基盤モデルの高度化を起点とした展開で先行し、中国は政策主導のもと導入と標準化を同時に進めている。これに対し日本は、安全性や品質、現場適合を重視する分野で強みを有するものの、基盤モデルや計算資源への投資規模では米国や中国に見劣りする面もあり、米中型の規模競争は現実的とは言い難い。
◆こうした中、日本政府は産業データを活かしつつ、国産の基盤モデルや評価・実証環境の整備を進め、製造業等の競争力強化につなげる構想を示している。このような戦略は、日本の強みが発揮されやすい領域に資源を集中するという点で、妥当と評価できる。
◆しかし、フィジカルAIの社会実装に向けては、日本は開発・検証段階と導入段階で異なるボトルネックがある。前者では、安全性や業務影響への配慮から実地試行に制約があるため、シミュレーション基盤や計算資源の確保が重要となる。後者では、現場ごとの個別最適が実装負荷として顕在化しやすく、横展開や継続的な改善がしづらい。
◆したがって、フィジカルAIの社会実装の成否は、技術性能の高さだけでなく、安全性や品質、責任分界といった非技術的条件をどう設計するかにも左右される。日本は、これらの条件を現場に即して丁寧に整理してきたことが強みである一方、今後はその強みを横展開可能な形へ転換できるかが焦点となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
フィジカルAIの進展で注目の人型ロボット
日本はロボット技術の優位性を武器にAI分野で存在感を示せるか
2025年09月01日
-
AIの社会実装と加速するインフラ投資
2025年のAI動向と2026年の展望
2026年01月28日
同じカテゴリの最新レポート
-
経済指標の要点(8/19~9/15発表統計)
2026年09月15日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
消費税減税・給付の都道府県別影響
地域間格差は最大で1人あたり年間0.7万円程度、大都市圏の恩恵大
2026年09月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

