フィジカルAIの進展で注目の人型ロボット

日本はロボット技術の優位性を武器にAI分野で存在感を示せるか

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2025年09月01日

サマリー

◆AIが現実世界で行動する「フィジカルAI」への関心が高まっている。日本政府も、AIとロボットの融合による社会変革に注目しており、首相によるAI戦略会議での言及などを通じて、政策的な関心の高まりがうかがえる。フィジカルAIとは、物理環境と直接相互作用しながら柔軟にタスクを遂行するAI技術であり、その応用領域は「モビリティ融合型」「産業用途型」「サービス・生活支援型」「人型・汎用型」の4つに分類される。ロボットや自動運転車など、現実世界での多様な活用が期待されている。

◆フィジカルAIが注目される背景には、技術の進歩と社会的ニーズの高まりがある。フィジカルAIは、生成AIの次なる応用領域として注目されており、ロボット基盤モデルの登場により、物理空間での行動や適応能力が大きく進化しつつある。社会的ニーズとしては、労働力不足や高齢化、災害・高所作業などの危険作業の代替に加え、医療・教育・観光分野での新サービス創出への期待が高まっている。

◆フィジカルAIの中でも、人型ロボットは特に注目されている。人間に近い形状と動作を持つことで、既存の人間向け環境との親和性が高い。さらに、生成AIやロボット基盤モデルの進歩により、柔軟かつ汎用的なタスクへの対応も可能になりつつある。こうした特性により、導入コストの抑制や柔軟な運用が期待でき、他のロボット形態と比べて社会実装が進めやすいとされている。

◆フィジカルAIは、単なる技術革新にとどまらず、雇用構造や社会の在り方に変化をもたらす可能性がある。日本は産業用ロボットに強みを持つ一方、AI分野では米国や中国に後れを取っている。フィジカルAIは、こうした技術的ギャップを埋める有望な領域とされ、国際的な存在感を高める契機としても期待される。技術力を社会実装に結びつけるには、戦略的な対応が欠かせない。対応が遅れれば、人材流出や技術主導権の喪失につながりかねず、AI技術の受け手にとどまるリスクもある。官民連携による制度整備や人材育成、スタートアップ支援など、総合的な取り組みが求められている。

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