サマリー
◆政府は1都3県への緊急事態宣言を3月21日まで再延長する方針である。人出と実効再生産数の強い相関関係をもとに、東京都における新型コロナウイルス感染症の感染状況を将来推計すると、少なくとも3月半ばまでは新規感染者数の緩やかな減少傾向が続くとみられる。人出の水準が宣言期間中に横ばいで推移すれば、新規感染者数は3月末にかけて1日当たり150人前後まで減少すると試算される。
◆1都3県への宣言再延長による実質GDPへの影響は▲1,400億円程度とみられる。ただし6府県への宣言が2月末に前倒しで解除されたことを加味すると、日本経済への影響は▲800億円程度にとどまる見込みである。当社では、2021年1-3月期の実質GDP成長率見通しを前期比年率▲8.0%から同▲8.2%程度に下方修正する方向で検討している。GDP2次速報が公表される3月9日に最新の経済見通しを示す予定だ。
◆今後半年程度の人出について3つのシナリオを想定し、感染状況のシミュレーションを行った。人出が宣言解除後に緩やかに回復する場合、東京都の新規感染者数は7月に1日当たり30~40人程度まで減少する。一方、人出が急増すると7月頃に3度目の宣言再発出を余儀なくされる可能性がある。そのため宣言解除後は慎重に経済活動を再開させることが望ましい。
◆仮に感染力の強い変異株が流行し、ワクチンの接種が緩やかなペースにとどまると、2021年度の実質GDP成長率見通しは、メインシナリオの前年比+3.8%から同▲0.1%へと大幅に悪化する。同年度の全国の感染者数は125万人程度、死者数は0.9万人程度となり、経済苦による自殺者の大幅増も予想される。ワクチン接種体制の整備・強化を積極的に進めるとともに、変異株の流行には引き続き細心の注意が必要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月全国消費者物価
エネルギー高対策の補助縮小や食料価格高騰が物価を押し上げ
2025年05月23日
-
AI時代の日本の人的資本形成(個人編)
AI時代を生き抜くキャリア自律に向けた戦略
2025年05月22日
-
2025年3月機械受注
民需(船電除く)は事前予想に反して2カ月連続で増加
2025年05月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日