サマリー
◆8月31日に夏季休暇後初めてとなる閣議が開かれ、Brexitにおける大きな方向性が確認された。テリーザ・メイ首相は、EU単一市場へのアクセス確保と引き換えに、人の移動の自由を許容することはないとして、英国がEUを離脱すればEU移民の抑制に取り組むことを確約した。これによりノルウェー型(EEA)やスイス型(EFTA)のようなEUとの関係性を目指すのではなく、カナダ型(FTA)の方向性を目指すことが示唆されたこととなる。
◆50条行使の時期が迫り、単一市場へのアクセス確保の道が閉ざされつつある中、シティではEUパスポートが消滅した時への対応が現実的な課題となっている。Brexit後、(EUから見て第三国となる)英国が同等性評価を獲得するためにも、EU法に沿った規制を英国内で導入する必要があり、シティにある金融機関はMiFIDⅡへの対応作業を加速させている。ただBrexit後、シティの金融ハブとしての競争力を高めるためには、同等性評価の獲得はむしろ足枷になるとの指摘がある。
◆英国の消費者信頼感指数は大幅に低下(7月マイナス12%)するも、雇用統計の堅調さは、英国経済の底堅さを示している。自動車などの高額商品への消費意欲が継続するかどうかは不透明であるが、失業率が大きく上昇しなければ、消費者支出の大幅な減退は免れる可能性も高い。さらに8月の製造業PMIは、10ヵ月ぶりの高水準(53.3)となり、投票後のポンド急落が製造業の輸出にプラスに作用したことがうかがえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日