サマリー
◆5月22~25日にEU(欧州連合)の28加盟国で実施された欧州議会選挙では、事前に予想されていた通り、EU統合に懐疑的な政党が多数躍進した。ユーロ圏債務危機対策でEUが各国の政策に介入する機会が増えたこと、一連の危機対策は成果をあげつつあるものの高失業問題など国民にとってまだ痛みの方が大きいことが、EUへの抗議票となったことは確かであろう。
◆今回の欧州議会選挙は、リスボン条約によって欧州議会の権限が強化されてから初めての選挙で、その権限強化の一環で次期欧州委員会委員長の人選にこの選挙結果が反映されることでも注目されていた。欧州議会という立法府の選挙に続いて、欧州委員会委員長という行政部門のトップも交代する2014年はEUにとって大きな政治変動の年である。欧州議会選挙でのEU懐疑派の支持拡大は、EUに対する信頼回復を重視した新体制構築という大きな課題を明らかにしたと言うことができるだろう。
◆もっとも、今回の選挙でEU支持派は依然として7割以上の議席を欧州議会で得ており、この選挙結果がEU統合推進という基本方針を揺るがすと判断するのは早計であろう。EU懐疑派の台頭度合いは国ごとの差異が大きく、EUの政策に対する不満以上に、自国政府に対する不満をEU議会選挙という場にぶつけてきた側面があると考えられる。自国政府に対する強い不満、不信が一番端的に表れたのはフランスで、オランド大統領はまさに正念場を迎えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
-
消費データブック(2025/9/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年09月02日
-
2025年4-6月期法人企業統計と2次QE予測
トランプ関税等の影響で製造業は減益継続/2次QEはGDPの上方修正へ
2025年09月01日
-
企業価値担保権付き融資の引当等の考え方
将来情報・定性情報を適切に債務者区分・格付に反映
2025年09月01日
-
“タリフマン”トランプ大統領は“ピースメーカー”になれるか ~ ノーベル平和賞が欲しいという野望
2025年09月03日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日