欧州議会選挙でEU懐疑派が躍進

EU拒否というよりも、自国政府に対する不満と不信の反映

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2014年05月29日

  • 山崎 加津子

サマリー

◆5月22~25日にEU(欧州連合)の28加盟国で実施された欧州議会選挙では、事前に予想されていた通り、EU統合に懐疑的な政党が多数躍進した。ユーロ圏債務危機対策でEUが各国の政策に介入する機会が増えたこと、一連の危機対策は成果をあげつつあるものの高失業問題など国民にとってまだ痛みの方が大きいことが、EUへの抗議票となったことは確かであろう。


◆今回の欧州議会選挙は、リスボン条約によって欧州議会の権限が強化されてから初めての選挙で、その権限強化の一環で次期欧州委員会委員長の人選にこの選挙結果が反映されることでも注目されていた。欧州議会という立法府の選挙に続いて、欧州委員会委員長という行政部門のトップも交代する2014年はEUにとって大きな政治変動の年である。欧州議会選挙でのEU懐疑派の支持拡大は、EUに対する信頼回復を重視した新体制構築という大きな課題を明らかにしたと言うことができるだろう。


◆もっとも、今回の選挙でEU支持派は依然として7割以上の議席を欧州議会で得ており、この選挙結果がEU統合推進という基本方針を揺るがすと判断するのは早計であろう。EU懐疑派の台頭度合いは国ごとの差異が大きく、EUの政策に対する不満以上に、自国政府に対する不満をEU議会選挙という場にぶつけてきた側面があると考えられる。自国政府に対する強い不満、不信が一番端的に表れたのはフランスで、オランド大統領はまさに正念場を迎えている。

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