ASEAN NOW (Vol.13)

欧州債務危機の影響小さいアセアンは当面の避難先だ

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2012年06月07日

  • 佐藤 清一郎

サマリー

◆世界経済のグローバル化に伴って、ある地域・国の経済・金融現象が他の地域・国へ波及する度合いが高まってきている。今回の欧州債務危機も世界レベルで悪影響を及ぼしているが、アセアンについては景気減速のスピードが遅く外的ショックによるマイナスの影響は相対的に小さいように見える。主な理由は、アセアンは内需が堅調な国が多いこと、欧州とアセアンの貿易関係は薄れる方向にあること、欧州系銀行のアセアンへの貸出残高がそれ程大きくないこと等を指摘できよう。

◆1990年、アセアンから見た欧州との貿易割合は15.8%あったが、それが、1997年アジア通貨危機を契機に大きく低下した。その後もそのトレンドを持続して2010年では9.6%まで低下してきている。欧州系銀行のアセアン主要5ヶ国への貸出残高を見ると、2011年9月末で、アセアン主要5ヶ国全体に占める欧州系銀行の貸出割合は9.8%となっている。国別で見ると、貸出国としては英国、借入国としては、フィリピン、マレーシアの割合が大きい。

◆アセアンと欧州の経済・金融関係はそれ程深くないので、欧州債務危機によるアセアンへの直接的な影響は小さいと見られるが、アセアンと中国の貿易割合が急拡大していることを考えると、中国の景気減速を通じたアセアンの中国向け輸出減少等の間接的な影響がでる可能性はあるだろう。しかし、全体として見れば、アセアンは、個人消費を中心に内需が堅調な国が多く外的ショックの影響の小さい地域として当面の避難先となりうるし、より積極的には将来の有望な投資先となりうる。

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