サマリー
◆2022年8月の主要経済統計は概ね堅調であった。ゼロコロナ政策が堅持される中、8月の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は1日当たり平均1,736人と、6月の169人、7月の591人から増加傾向を強めた。それでも経済への悪影響が限定されたのは、感染者が急増した地域が経済規模の比較的小さいところに集中していたことが主因であると思われる。ただし、感染者の多い地域=経済規模が小さい地方という構図が維持されるとは考えにくく、今後、景気が本格的に回復していく保証はない。
◆2023年の中国経済見通しは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大抑制に成功するか否か、ゼロコロナ政策が緩和されるかどうかが鍵を握る。まず、ゼロコロナ政策は第20回共産党大会後に緩和される可能性がある。同政策への固執の背景のひとつには、感染抑制を、異例の3期目に突入する習近平総書記の手柄としたい考えがあるかもしれない。3選という目的が達成されれば、その次のステップとして、経済重視へと舵が切られる可能性がある。一方で、党大会直後に発表される指導体制が、習近平氏の1強体制の強化との結果となれば、習近平氏が一度始めた政策が誤りであったとしても、途中での軌道修正が難しくなる懸念がある。2023年の中国の実質GDP成長率は、楽観シナリオでは前年比6%台に乗せる可能性がある一方で、悲観シナリオでは同3%台にとどまる懸念がある。それを左右するのが「政治(習近平氏)」ということになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
覇権争いの中、人口減少国に転落する中国
2019年版と2022年版の国連中位推計、2100年の人口に3億人の差
2022年09月01日
-
中国:不動産に依存した経済発展の終焉
住宅需要・供給の抑制、デベロッパーの国有化でソフトランディング?
2022年08月31日
-
中国:ゼロコロナ政策の弊害と不動産不況
ペロシ議長訪台、電力不足、物価上昇による経済への影響は限定的
2022年08月22日
-
第二次コロナ・ショック、回復は感染抑制次第
中国経済見通しを下方修正、2022年は4%程度の実質成長へ
2022年07月20日
-
中国経済見通し:2022年下半期に本格回復へ
景気浮揚のための政策パッケージを発表
2022年06月22日
-
中国:ゼロコロナ政策下の中国経済の行方
年後半は明確に回復も22年は4.5%程度の実質成長にとどまると予想
2022年05月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日