サマリー
今、中国の五大銀行に次ぐ存在である中堅銀行達は、アリペイを代表とするインターネット金融サービスの躍進と、金融規制環境の変化により、かつてよりも厳しい競争を迫られつつある。
アリペイとはアリババグループが2003年に開始したオンライン決済サービスである。アリペイの口座に資金を預けておけば、携帯端末から簡単に支払や送金ができる。このアリペイを急速に発展させる一助となったのが「余額宝」の存在だ。「余額宝」はアリペイの口座に預けている資金を運用できる金融商品である。通常の銀行預金よりも金利が高いことに加えて、安全性も他の金融商品と比べて優れているという評価から、「余額宝」の残高はサービス開始以来急速に増加し、2017年9月末時点で1.56兆元(約26.84兆円)を超えた。
「余額宝」の急速な発展に最も影響を受けやすいのが中堅銀行ではないだろうか。五大国有銀行と比べて信頼性が劣り、かつ預金者は都市部に多い。預金の獲得に向けてか、今年に入り中堅銀行は従来の通常の預金に加えて仕組預金の残高を増加させている。なお、仕組預金とは通常の預金よりも利息が高いが、利息が変動する商品である。
また、「余額宝」の存在とは別に、金利自由化等も中堅銀行に競争を迫ったといえる。
2013年より中国人民銀行は預金金利と貸出金利の自由化を推進した。これにより各行独自に預金/貸出金利の設定が可能となり、これまで約束されていた利鞘は変動することとなった。
加えて、中国は銀行のもう一つの資金調達源ともいえる理財商品の規制を強化しつつある。具体的には2017年より理財商品を「広義の貸出」として安全性評価指標の一つとして、その増加に抑制をかけた。これを受けて理財商品の残高は2017年1月末のピークから同年6月末時点で6.4%減少している。中堅銀行の負債残高40.4兆元に対し、中堅銀行の理財商品の残高は11.8兆元である(※1)。理財商品により調達した資金は一般的に貸出よりも高い利回りで運用されている。規制により理財商品による資金調達が減少すれば、その運用により得ていた収益も減少することとなると思われる。
金融政策は現状、緩やかな引き締めに向かいつつあるように見受けられる。仮に本格的な引き締めを行っていくとすれば不良債権は増加していく可能性もあり、安定した資金源である預金獲得は今後より重要となるのではないだろうか。中堅銀行の今後の先行きは注視していく必要があるだろう。
(※1)出所:銀行業理財登記託管中心「中国銀行業理財市場報告」
本稿は、大和総研コラム 『今月の視点-中国:アリペイの躍進の陰で競争に晒される中堅銀行』(2017年11月13日)を一部修正のうえ、転載したもの。
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