2020年11月13日
サマリー
◆日本銀行は、対象となる地域金融機関の当座預金残高に+0.1%の付利を行う特別当座預金制度を導入した(3年間の時限措置)。特別付利の対象要件として、経営の効率化または経営統合等を求めており、地域銀行の再編の加速を企図していることがうかがえる。
◆特別付利の対象要件のうち、経営の効率化についての要件を達成することは容易ではない。地域銀行の多くは過去3年間で効率性が悪化しており、これは削減している経費以上にトップラインが減少しているためである。
◆特別付利が得られた場合の収益への影響を試算すると、業務純益対比で地方銀行は4.4%、第二地方銀行は4.3%の増益となると見込まれる(単体合算ベース)。再編というオプションが経営戦略の俎上に載せられている地域銀行に対しては、再編を行うインセンティブとなり得るだろう。
◆これまでも独禁法特例法の施行や預金保険料可変料率化の検討など、地域銀行のインセンティブに働きかけようとする動きは相次いでいる。今回の制度は、地域銀行の再編を促す政策が中央銀行から打ち出されたという点で異例である。また、足元では統合に際して政府が返済不要の資金を交付する案も出ている。これらは再編の環境整備を中心としてきたこれまでの施策と明らかに一線を画している。様々な政策当局が地域銀行の再編に対する期待を高めつつあり、再編を迫るプレッシャーは新たなステージに移行したといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
改正金融機能強化法のコロナ特例措置がもたらす功罪
広がる入口と狭まる出口
2020年07月30日
-
預金保険の可変料率化は地銀にとってインセンティブになり得るか
2019年12月26日
-
拡大する「コロナオペ」の効果
金融危機を防ぐ日本銀行の取り組み
2020年07月07日
-
独禁法特例法が地域銀行の合併等の動向に与える影響
地域銀行の動向を見通す際には資金需要、HHI、競争可能性に注目
2020年08月13日
-
マイナス金利政策を採用する中央銀行の工夫
階層構造導入とイールドカーブへの働きかけ
2019年12月16日
-
銀行の店舗網再編の行方
「脱フルバンキング店舗網」の発想と「非伝統的な店舗」の試み
2020年10月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
日銀のETF売却とスチュワードシップ責任
超長期投資家となる日銀のスチュワードシップ責任の果たし方
2025年09月26日
-
日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定
100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要
2025年09月22日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日