日銀の特別付利制度の地域銀行への影響

特別付利は魅力的だが、効率化による要件の充足はハードルが高い

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サマリー

◆日本銀行は、対象となる地域金融機関の当座預金残高に+0.1%の付利を行う特別当座預金制度を導入した(3年間の時限措置)。特別付利の対象要件として、経営の効率化または経営統合等を求めており、地域銀行の再編の加速を企図していることがうかがえる。

◆特別付利の対象要件のうち、経営の効率化についての要件を達成することは容易ではない。地域銀行の多くは過去3年間で効率性が悪化しており、これは削減している経費以上にトップラインが減少しているためである。

◆特別付利が得られた場合の収益への影響を試算すると、業務純益対比で地方銀行は4.4%、第二地方銀行は4.3%の増益となると見込まれる(単体合算ベース)。再編というオプションが経営戦略の俎上に載せられている地域銀行に対しては、再編を行うインセンティブとなり得るだろう。

◆これまでも独禁法特例法の施行や預金保険料可変料率化の検討など、地域銀行のインセンティブに働きかけようとする動きは相次いでいる。今回の制度は、地域銀行の再編を促す政策が中央銀行から打ち出されたという点で異例である。また、足元では統合に際して政府が返済不要の資金を交付する案も出ている。これらは再編の環境整備を中心としてきたこれまでの施策と明らかに一線を画している。様々な政策当局が地域銀行の再編に対する期待を高めつつあり、再編を迫るプレッシャーは新たなステージに移行したといえる。

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