2020年07月30日
サマリー
◆2020年6月12日、地域金融機関への予防的な資本注入を行う改正金融機能強化法が成立した。東日本大震災時に一部の金融機関に適用されていた特例措置を、事実上全国の地域金融機関に拡大するものである。
◆公的資金の注入は、経済に外生的ショックが生じた際に金融機関の自己資本比率の低下を通して生じかねないキャピタルクランチを予防するものである。改正で対象を拡大した特例措置は、制度の利用の敷居を下げて金融仲介機能の維持に万全を期すものである。
◆他方で、特例措置は注入した資金の回収を困難にする可能性がある。過去の注入行の動向を分析すると、国の持ち分に含み損が発生している注入先が震災特例適用行に多い。また、特例措置で設定されている優先配当率は低く、金融機関が早期に返済を行うインセンティブは小さい。
◆注入スキームの構造上、仮に公的資金を注入した金融機関の株価や業績の低迷が続けば、国は政策の出口において国民負担を甘受するか、金融機関の健全性の低下を許容するかという選択を迫られる可能性がある。特例措置はそうしたリスクを高めるものである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
企業の再生支援を後押しする金融検査マニュアルの廃止
ポストコロナの借入環境を見据える
2020年05月12日
-
預金保険の可変料率化は地銀にとってインセンティブになり得るか
2019年12月26日
-
銀行の店舗はそんなに不要なものなのか?
2020年06月08日
-
地銀の店舗は付加価値を保てるのか
低下する存在意義と進展が見られない効率化
2019年09月30日
-
地銀の店舗網はどのように再編できるか
GIS(地理情報システム)を用いた空間分析で地銀の店舗網再編を考える
2019年10月02日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日