マイナス金利政策を採用する中央銀行の工夫
階層構造導入とイールドカーブへの働きかけ
2019年12月16日
サマリー
◆ECBは9月にマイナス金利の「深掘り」を行った。しかし、同時に発表された準備預金の階層構造導入によって、民間銀行がECBに支払う加重平均金利のマイナス幅が縮小し、マイナス金利政策による直接的な負担は軽減されるとみられる。
◆日本において、マイナス金利の銀行等への影響は、金利水準とイールドカーブの構造に依る。イールドカーブは昨今再びフラット化が進んでいる。日本銀行は国債買入額を調整することでイールドカーブをスティープ化させ、金融機関に対するマイナス金利政策の副作用を軽減させようとしている。
◆マイナス金利政策を採用する中央銀行は、準備預金の階層構造の採用や、イールドカーブの構造に影響を与えることで、副作用を軽減する仕組みを工夫しており、さらなる金融緩和措置の必要性が高まった場合に備え、金融緩和を持続する方策の余地を探っているといえよう。
◆イールドカーブフラット化の背景には、海外に投資先を見出そうとする国内投資家の動きがある。為替スワップ市場に過度に依存することは、金融システムを不安定化させるリスクをはらんでいる。国内金融機関は安定調達基盤の確保に努めることが課題といえよう。
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