今なお不十分な米国企業のダイバーシティ

複合マイノリティを取り残さないインターセクショナリティの視点を

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2024年10月28日

  • 金融調査部 研究員 中 澪

サマリー

◆NASDAQ100構成企業の取締役会を事例として米国企業におけるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)の現状を分析した結果、主に次の4点が明らかとなった。(1)依然として白人男性が取締役会の多数派を占める。(2)女性比率の平均値は32.8%、非白人比率では26.0%である。(3)性的マイノリティの取締役がいる企業はほとんどない。(4)白人女性比率の平均値が23%なのに対し非白人女性比率は10%と女性内部に格差があり、複合マイノリティが取り残されている。

◆米国企業のダイバーシティ推進は今なお不十分である現状が示唆される。さらなるDEI推進における課題としては、インターセクショナリティ(交差性)の視点を取り入れ、取組みの包摂性を高めることが挙げられる。また、ウォッシング(見せかけの対応)の防止も重大な課題である。企業は、DEIが人権の観点から求められる取組みであることを理解する必要がある。これらの課題は日本企業にも当てはまる。

◆大統領選挙を控えた米国では、企業を取り巻く政治的・社会的状況としてDEI推進をめぐる不確実性が高まっている。しかし、ダイバーシティの推進は十分に達成されていない。また、短期的な状況の変化だけを理由としてDEI推進を止めることは妥当な判断とはいえない。マイノリティの権利が積極的に保障されているとはみなしにくい状況が生じているからこそ、企業の社会的責任としてDEIのさらなる推進が求められていると、筆者は考える。

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