2023年06月05日
サマリー
◆本稿では、国連におけるLGBTQ+の人権をめぐる主な活動の展開を確認した上で、2017年に国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によって策定された「レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーおよびインターセックスの人々に対する差別への取組み—企業のための行動基準」(本稿では「国連LGBTI企業行動基準」と表記)に焦点を当て、日本企業に対する示唆を議論する。
◆LGBTQ+に対する差別は人権侵害である。もっとも、その認識が広く共有されるようになったのは比較的最近のことだ。国連は1948年の「世界人権宣言」の採択以降、人権保障のためのさまざまな活動を展開してきたが、その国連においてさえもLGBTQ+の人権に関する活動が本格化したのは2010年代に入ってからである。
◆国連LGBTI企業行動基準では、5つの行動基準が定められている。この行動基準は、その包括性と具体性から、企業のLGBTQ+に関する取組みについての行動基準として最も重要なものの1つと考えられる。これまでに賛同表明した企業・団体等の数は400を超えるが、その多くは欧米企業であり、日本企業は5社に留まっている。
◆日本でもLGBTQ+に関する取組みを行う企業の数は増えている。ただし、そのような取組みの意図や内実をめぐっては疑問の声も上がっており、企業には人権に対する認識をより高めることが求められる。日本企業が、自社の取組みをめぐって国内外のさまざまなステークホルダーとのコミュニケーションを図る上でも、国連LGBTI企業行動基準を参照することの意義は大きいと考えられる。
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