日本の金融業界におけるLGBTQ+包摂

企業調査データの計量テキスト分析から現状を紐解く

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  • 金融調査部 研究員 中 澪

サマリー

◆ビジネスを通じたLGBTQ+包摂の取組みが日本企業の間で急速に広がっている。本稿では、特に金融業界に焦点を当て、国内外の事例を概観した上で、企業調査データの計量テキスト分析を主な手法として、取組みの現状を紐解く。

◆金融機関によるLGBTQ+包摂の取組みは、約40年前の米国においてLGBTQ+コミュニティを顧客とした貯蓄貸付組合の設立から始まったと考えられる。しかし、取組みの変遷を辿ると、現在は商品・サービスを通じた特化型の取組みは少なく、ファイナンシャル・アドバイザーに対する教育等を通じて、金融アクセスにおける普遍的な差別の禁止と平等の保障を図ろうとする動きが主流になっているとみられる。

◆日本の事例をみると、金融業界では商品性やサービスの見直しを通じたLGBTQ+包摂が進んでいる。最も早くから対応を開始したのは保険業で、保険金の受取人に同性パートナーを指定できる保険会社は多い。銀行業では住宅ローンの商品性の見直しが進み、同性カップル向けのペアローン等がみられる。一方、証券業の取組みは限定的だ。

◆トピックモデルを用いて取組み内容の分類を行ったところ、①「性的指向と性自認(SOGI)に基づく差別禁止の明文化」、②「情報収集と啓発活動」、③「SOGIに配慮した職場環境整備」、④「社内研修の実施」、⑤「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)推進としての取組み」、⑥「同性パートナーの承認と包摂」、の6つのトピックが浮かび上がった。さらに、業種別に分析した結果、金融業界内での業種による取組みの状況や内容の違いが明らかとなった。

◆LGBTQ+のさらなる包摂に向けた今後の課題として、(1)LGBTQ+が直面する困難や、人権問題としての重要性に対する理解を深め、組織内で徹底させること、(2)LGBTQ+包摂のための社内環境を整備することが重要である。具体的な実践のあり方として、社内研修や勉強会の内容を職種別に深めていくこと、職場におけるDEI推進の重点課題の1つとしてLGBTQ+の包摂を位置づけることを提案したい。

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