2015年06月22日
サマリー
◆少子高齢化による生産年齢人口の減少を補うため、政府の政策では高齢者や女性などの労働参加を促すことに重点が置かれている。一方、製造業からサービス業への就業者シフトが鮮明になっており、サービス業を中心に産業毎に労働生産性を維持・向上させることが求められている。
◆全産業の2014年の高齢化率(65歳以上の高齢就業者が占める割合)の平均は11%、2009年から2014年の期間の高齢化率変動は+1.7%ポイントであった。サービス業、卸売・小売業、農林業において高齢者の就業者数が多く、同期間で高齢化率変動が大きい不動産業、建設業、電気・ガス等業などでは急速に高齢化が進む。高齢化によって労働力と共に付加価値額も減少するとみられるほか、知見・ノウハウの流出等により市場環境が大きく変化した場合に柔軟に対応できないといった問題に直面する可能性もある。
◆全産業の2014年の女性比率(女性の就業者が占める割合)の平均は43%、2009年から2014年の期間の女性比率変動は+1.0%ポイントであった。女性就業者数は、サービス業、卸売・小売業で全体の7割を占める。2009年から2014年の期間で女性就業者数は91万人増加し、サービス業は78万人、卸売・小売業は14万人の増加である。女性の就業増加分のほとんどは、労働生産性の低い産業に集中していると言えよう。
◆他方、就業形態に幅のある非正規雇用が拡大している。全産業の2014年の非正規率(非正規雇用者が占める割合)の平均は31%、2009年から2014年の期間の非正規率変動は+3.5%ポイントである。非正規率の変動が大きい産業と小さい産業で二極化しており、非正規率が高い卸売・小売業とサービス業が全体を押し上げている。近年は製造業で非正規雇用者数が大きく増加しているが、労働生産性は低迷している。
◆各産業の労働生産性向上のためには、これまで以上に高齢者、女性や非正規雇用の就業を適切に付加価値に結び付けることが求められるのではないか。同時に、新たな就業者のモチベーションと職場環境のギャップを埋めて、各産業において労働生産性を向上させることも重要になろう。
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