2025年10月31日
サマリー
◆2024年、米テキサス州を中心とする11州の司法長官がBlackRock、State Street、Vanguardを反トラスト法違反で提訴した。3社は米国の複数の主要な石炭企業の大株主となっている。原告側は、株主としての影響力を用いて石炭の生産量を減少させ、石炭価格を人為的に上昇させたと指摘している。そして、消費者等が不利益を被り、3社は利益を得たと主張している。
◆米国では2010年代半ば頃から、パッシブ運用の拡大による機関投資家の株式保有状況(水平的株式保有もしくは共同保有)が公正な競争を阻害しているのではないかという指摘が学術界からなされていた。今回はこの問題に共和党の反ESGが加わり、訴訟に至ったものと考えられる。今後審理が行われる中で、水平的株式保有/共同保有が石炭価格に与えた影響の有無をどのように立証するかが注目される。
◆水平的株式保有/共同保有の問題は過去にEUにおいても議論されたことがある。ただし、米国・EUどちらにおいても、水平的株式保有/共同保有が競争に与える影響に対して、見解は分かれている。機関投資家が議決権行使や対話を通じて企業のコーポレートガバナンスの改善に貢献してきた側面や、パッシブ運用の拡大が個人投資家の手数料の抑制や投資機会の拡大などにつながっていることもあり、水平的株式保有/共同保有に対して規制対応を行う弊害の方が大きいと判断されている。
◆日本はGX戦略やダイバーシティ&インクルージョンの取り組みなどが引き続き推進されており、米国の状況とは異なる。水平的株式保有/共同保有の影響も現時点では限定的と考えられる。ただし、将来的に政策保有株式の削減が進み、機関投資家による株式保有が増えれば、水平的株式保有/共同保有が競争に与える影響について検証が必要な状況が生じるかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
実運用段階に入った国連管理型カーボンクレジットの利用可能性
供給制約と利用制度の要件を踏まえたクレジット活用の視点
2026年09月04日
-
2026年3月期有報の人的資本開示②
「従業員給与等の決定方針」に何が書かれていたか
2026年08月17日
-
ボランタリー・カーボン市場(VCM)の動向と国際取引の課題
高品質クレジットの流通を支える市場・制度基盤の整備
2026年08月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日


